【英・エクリプスS】エネイブル死角なし 欧州最強牝馬「最大の目標は凱旋門賞」でも

[ 2020年7月5日 05:30 ]

 JRAが馬券発売する英G1「エクリプスS」が、日本時間の5日午後11時35分、サンダウン競馬場でゲートイン。7頭立てだがメンバーは濃い。日本が誇る6歳牝馬ディアドラ(橋田)が登場。オイシン・マーフィー(24)を背に大物食いに挑む。仕上がりは万全だ。迎え撃つは同じく6歳となった最強牝馬エネイブル。今年も欧州競馬はこの馬を中心に回るのか。世界が注目する一戦だ。

 昨秋の凱旋門賞でエネイブルがすんなりと13連勝で凱旋門賞3連覇を飾っていたら、引退して今ごろ彼女はここにいなかった。ヴァルトガイストに敗れて2着。主戦のデットーリはこれ以上ないくらい肩を落とした。有終の美を飾れず…。

 いや、終わりではなかった。オーナーのハリッド・アブドゥラ殿下は現場の希望を受け入れ、現役続行を選択した。管理するゴスデン師は6歳となるエネイブルを慎重に仕上げていく。「冬も放牧に出さず、ずっと在厩させていた。2月から軽く、4月からペースを上げていった」。今の状態について「年齢的に代謝が変わってきた。レースに向けて体重を落とし、レース用のコンディションに持っていくのが難しくなりつつある」と率直に認めた。続けて「最大の目標は凱旋門賞。初戦でピークになるわけではない。ここを使ってもっと良くなる」。今回がステップボードであることを強調した。

 ならば良化途上の今回、付け入る隙があるかと言えば…NOだ。「精神面が凄く強くてしっかり。走ることが大好きな馬だから」(同師)。前向きで休み明けでも極端にパフォーマンスが落ちることはない。昨年のエクリプスSも休み明けでマジカルに完勝した。

 連覇に向けての戦術についてはこう話す。「包まれてしまいやすいコースなので、内に1頭入れて進むのではないかな。スローにはならないだろう。あとは馬のことをよく知っているデットーリに任せる」。最後は主戦に託した。

 また、日本のエネイブルファンに向けてもメッセージを寄せた。「応援してもらえば彼女もとても喜ぶよ。昨年の凱旋門賞は戦術がうまくいかず負けてしまったが、今年はその借りを返したいね」

 【一口メモ】
 (1)バンコク 昨年の英ダービーが12着。格下感は否めない。

 (2)ガイヤース ドバイ出走の予定が中止。昨年凱旋門賞は早々と失速して10着だったが、2400メートル路線で欧州最強の逃げ馬。アップルビー師は「トップコンディションだ。ますます成長している。エネイブルと再び戦えるのを楽しみにしている」。

 (3)ジャパン 昨夏にG1・2勝。キーファーズの松島正昭氏が所有権の一部を得ており、今回はキーファーズの勝負服で出走。母の半兄サガシティは武豊が01年凱旋門賞で騎乗して3着。その兄サガミックスは98年凱旋門賞馬。そして99年サンクルー大賞ではエルコンドルパサーに完敗。日本との縁は深い。

 (4)リーガルリアリティ 近親にゼネラリスト(97年金鯱賞勝ち)。初のG1挑戦だった昨年エクリプスSでエネイブル、マジカルに続く3着に健闘。

 (7)マジックワンド G1【1・8・1・8】が示す通りの善戦ガール。昨秋11月に豪G1メルボルンS(10着)から中3日でマッキノンSに出走し、待望のG1初制覇。

 ▽サンダウン競馬場の天気と馬場 日曜は曇りの予報。現地4日午後の発表で馬場は「グッド」のコンディションまで回復しており、レース当日は良馬場の見込み。ただ、芝は深く、例年通りに時計がかかりそう。レースレコードは09年シーザスターズの2分3秒40。

 ▽サンダウン競馬場 英国南東部のサリー州イーシャーにある。ロンドンからは電車で25分。芝コースのみ。右回り。エクリプスSのスタート地点は2角のポケット。長い向正面をひたすら進み、3~4角は急カーブ。あまり外を回すと大きく振られて、かなりの距離ロスとなる。コーナリングのうまさが問われる。最後の直線は力比べ。ゴールまで約800メートル続く上り坂が各馬の体力を奪う。スピードよりもスタミナとパワーが必要だ。

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2020年7月5日のニュース