【安田記念】アーモンド120点 超絶進化のジョーカー

[ 2019年5月28日 05:30 ]

完勝した昨年のジャパンCからさらに進化を遂げたアーモンドアイ(撮影・西川祐介)
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令和初の国賓にも見せたい万能のジョーカーだ。鈴木康弘元調教師(75)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第69回安田記念(6月2日、東京)ではアーモンドアイに満点超えの120点を付けた。達眼が捉えたのは5冠牝馬がたどる奇跡の進化。トランプ米大統領の来日にちなんで有力馬のボディーをトランプカードになぞらえながら解説する。

 魔法にかけられたような人知を超えた進化。昨年のジャパンC以来、半年ぶりに見たアーモンドアイの姿に思わず我が目を疑いました。肩の筋肉が異常なほど発達している。470キロ前後の牝馬なのに500キロ超の牡馬のような筋肉量。ボリュームとともに鋼のような強度も伴っている。元々、強じんな肩の持ち主だったとはいえ、この肩の筋肉は度を越しています。肩の変化に合わせてトモ(後肢)の弾力性も明らかに高まった。腹周りにも幅が増して丸みを帯びています。

 持てる力の100%どころか、120%まで出してしまいかねない驚異の筋肉。世界レコード(日本レコードを1秒5更新する2分20秒6)で完勝した昨年のジャパンCから、さらに2ランク、いや3ランクの進化を遂げている。普通に回ってくれば負けることはないでしょうが、結果よりも走り過ぎによるレース後の反動に気をつけなければなりません。頼もしさを通り越して恐れさえ抱かせる限界超えの馬体。従来のサラブレッドの枠組みを超えた肉体を手に入れてしまったのです。

 その馬体はあらゆるトランプカードを超越した特別なカード「ジョーカー」を想起します。言わずと知れた最高の切り札。どんなカードにも代用できる万能性はマイルでも2400メートルでも頂点に立つ距離万能の名牝に通じます。

 3歳時の馬体と異なる点がもう一つ。銭形の班点が首に浮かんでいます。新陳代謝が活発になると薄い皮膚ににじみ出る斑(まだら)模様。昨年のG1出走時の馬体写真を見直してみましたが、この斑は写っていません。古馬になって新陳代謝が上がってきた証です。ジョーカーの絵柄で知られる宮廷道化師の服装を彩るのも斑模様。ジョーカーには「ジョークを言う人」や「思いがけない事実」という意味もあります。鹿毛のレディージョーカーには馬体の進化とともに銭班点という思いがけない事実まで見つかりました。

 来日中のトランプ米大統領は26日、両国国技館で大相撲を観戦しました。ここだけの話ですが、安田記念当日に東京競馬場を訪れる極秘プランもあります。日本が誇るアーモンドアイを米国に招待するため大統領専用機を貸し出す計画…なんて、もちろんジョークです。28日に帰国の途に就きます。でも、ひと目見せたかった。世界広しといえども古今東西、類を見ないジョーカーの馬体を。魔法をかけられたように進化する令和の名牝を。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の75歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。今春、厩舎関係者5人目となる旭日小綬章を受章。

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