【日本ダービー】額田助手 リオンでかなえた感謝の夢舞台

[ 2019年5月22日 05:30 ]

元厩務員 田井秀一記者が迫る ホースマンシップ(3)

リオンリオンとともに初めてダービーに挑む額田助手
Photo By スポニチ

 リオンリオンを担当する額田洋介助手には忘れられない担当馬がいる。13年のセレクトセール当歳セリで最高価格2億4000万円(税抜き)で取引されたロイカバード。「何とかしてクラシック路線に乗せなければいけない」。父は言わずと知れたディープインパクト、母はG1・11勝の世界的名牝アゼリ。超良血馬を任された重圧は計り知れない。デビューから3戦で2勝。順調に思えたが、続くきさらぎ賞、京都新聞杯で共に3着。あと一歩のところでクラシック出走はかなわず。ついに引退までG1に出ることはなかった。「プレッシャーを感じてしまった」と今でも平常心で馬と向き合うことができなかったことを悔やんでいる。

 リベンジの機会はすぐにやってきた。昨夏、リオンリオンの担当に決まった。「ロイカバードは寺田寿男オーナーの馬で、リオンリオンは(妻の)寺田千代乃オーナー。こういう馬にまた携わらせていただいて、本当にありがたいです」と縁に感謝する。リオンリオンもまたエアグルーヴ、トゥザヴィクトリーと名牝2頭を祖母に持つ良血馬。「今度こそ、という思いでした。デビュー前から先生(松永幹師)が“凄く良い馬”と言っていたし、最初に乗った時は“こういう馬がいるのか”と感激しました」。入厩時はゲートに難があったが、焦らずに馬と向き合った。「馬の気持ちを優先していると馬自身も納得してくれて。苦手だったゲート内の駐立も今は大丈夫」。青葉賞は好スタートから逃げ切りV。弱点を最大の武器に変えてみせた。

 生まれながらにして血統で“値段”が決まるサラブレッドだが、携わる人によってその馬生は変わり得る。「一番近くにいる人間が自然体でいることが馬にとっては一番良い」。経験を糧に、額田助手は平常心で夢の舞台に挑む。

 ◆額田 洋介(ぬかだ・ようすけ)1978年(昭53)11月22日生まれ、福岡県福津市出身の40歳。実家の近所に乗馬クラブがあり、小学生時代から馬との接点があった。高校2年時に乗馬で国体に出場。高校卒業後は北海道安平町のノーザンファームでの4年半の修行を経て、02年にトレセン入り。妻とショッピングモールに出掛けるのが休日の楽しみ。

 ◇田井 秀一(たい・しゅういち)1993年(平5)1月2日生まれ、大阪府出身の26歳。阪大法学部卒。野球漬けだった高校卒業後に、道営・斉藤正弘厩舎に所属。厩務員として、引退後の98年菊花賞3着馬エモシオンに乗馬したのが自慢。大学時代はラジオNIKKEI第2の「中央競馬実況中継」でアルバイト。スポニチ入社後2年間はスポニチアネックス記者として芸能を中心に取材し、今年4月から中央競馬担当。

続きを表示

この記事のフォト

2019年5月22日のニュース