オジュウ、平地参戦はアイドルの使命 長山オーナーの胸の内

[ 2018年6月26日 05:30 ]

ズラリと並ぶ優勝レイの前で笑顔を見せるオジュウチョウサンの長山尚義オーナー(撮影・村上 大輔)
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 その挑戦、“半端ない”って!!30日に本格開幕する夏季競馬を前に、「’18夏の馬学講座」がスタート。第1回は障害最強馬オジュウチョウサン(牡7=和田正)のオーナー、長山尚義氏(73)の胸の内に迫る。7月7日福島の「開成山特別」(3歳上500万、芝2600メートル)で、5年ぶりの平地競走に出走するオジュウチョウサン。歴代1位のJ・G1・5勝を含む重賞9連勝中のスターホースの新たな挑戦の背景にあるロマンとは?

 ――改めて、4月の中山グランドJは圧巻の勝利だった。

 「アップトゥデイト(2着)の林騎手が4コーナーで後ろを見ていた。もう前を見ても仕方ないと思ったのだろう。それを見て勝ちを確信。石神騎手も相手はアップだと思っていたと思うが、余裕だった」

 ――史上最強の障害馬となったタイミングでの、平地参戦表明となった。

 「障害ではもう並ぶ者がいない存在。もちろん、このまま障害を使えばもっと勝てると思う。でも、昨年の有馬記念ファン投票でオジュウに入れてくれた人(1278票、77位)がいたことが心に残っていた。今回のグランドJ圧勝を見て、このままオジュウを障害馬として終わらせるのは自分のエゴだと感じた」

 ――宝塚記念ファン投票でも4268票で43位(宝塚出走メンバーの中では9番目)に入った。平地で見たいという声はさらに高まっている。

 「競馬は突き詰めれば夢とロマンだと思う。だからこそ、オジュウにどのくらいの実力があるか一流馬にぶつけてみたい。それには有馬や宝塚が一番だが、ファン投票で上位に入っても平地未勝利では出られないことが分かった。それで今回のプランになった」

 ――平地で勝たなければならない状況で、鞍上には武豊を迎えた。

 「7歳のオジュウにとって今年がラストチャンスだと思う。後悔したくないので日本一のジョッキーに依頼した。彼は私が初めて個人名義で所有した馬(ヤングエース)に初勝利をプレゼントしてくれたジョッキーでもある。これまで節目節目で彼と縁があった。今回はオジュウの節目」

 ――ズバリ、勝算は。

 「確かに障害とではペースなどが違うだろうが、全兄ケイアイチョウサンはラジオNIKKEI賞を勝利。全弟コウキチョウサンは今春、芝の1000万を勝ち、目黒記念でも(優勝馬から)0秒5差の8着に健闘。血統的にはやれると思う。オジュウが平地で未勝利なのは、気性面やタイミングの問題。チークピーシーズの効果で気性面の課題は解消したし、以前よりトモ(後肢)もしっかりした。何より4000メートルを、障害を跳びながらレコードで走り、最後の直線もまた伸びる馬。そんな馬はそうそういない。スタミナが凄いしスピードもある」

 ――勝てば年末の有馬記念の可能性が見えてくる。

 「まずは結果を出さないと大きなことは言えない。武君に乗ってもらった感触で今後について考えようと思っている。スタミナが豊富なことを考えればステイヤーズSとかも思い浮かぶし、勝利の先には有馬や、さらに海外、ドバイや凱旋門賞があるかもというファンの期待もあるだろう。私もロマンを抱いている」

 ――中山グランドJ当日に発売されたオジュウの縫いぐるみは、午前中には完売。他のグッズも大人気で、ブームと言っていいのでは。

 「中山競馬場のターフィーショップの外のバス停の所まで、20メートルも行列ができたそう。たくさんの方に愛されていると感じた。私は一口馬主から始めて、最初に持ったのがサッカーボーイ。理由はディクタスが好きだったから。同じく一口馬のステイゴールドもディクタスが入っている。ステイに、これも同じ一口馬だったパーフェクトジョイの妹であるシャドウシルエットをかけて生まれたのがオジュウの血統」

 ――ファンの夢であり、自身の好きな血統を突き詰めた結晶でもある。

 「昨年の中山大障害で単勝1・1倍に支持された。その先を考えたら“みんなのアイドル”になるしかないと思う。もう私だけのオジュウチョウサンではない。アイドルとして期待に応えたい。これが平地参戦の一番の理由です」

 ◆ディクタス フランスの競走馬で71年にG1ジャックルマロワ賞を制した。引退後は種牡馬になり、80年に日本に輸出され84年JRA賞最優秀3歳牡馬のスクラムダイナや、G1・2勝を挙げ88年JRA賞最優秀スプリンターに選出されたサッカーボーイなどを出した。

 ◆長山 尚義(ながやま・なおよし)1945年(昭20)5月25日生まれ、東京都港区出身の73歳。JRA馬主である株式会社チョウサンの代表取締役。社名、冠名である「チョウサン」は名字に由来する。主な所有馬はオジュウチョウサン(16、17、18年中山グランドJ、16、17年中山大障害)、ケイアイチョウサン(13年ラジオNIKKEI賞)、チョウサン(08年毎日王冠、長山尚義名義)。競馬以外の趣味は株とゴルフ。

 ◆オジュウチョウサン 父ステイゴールド 母シャドウシルエット(母の父シンボリクリスエス)牡7歳 美浦・和田 正一郎厩舎所属 馬主・チョウサン 生産者・北海道平取町坂東牧場 戦績22戦12勝 総獲得賞金5億3307万3000円。

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