【安田記念】香港の刺客ウエスタン、虎に変身 ハミ取って激走

[ 2018年6月1日 05:30 ]

ダートコースで追い切るウエスタンエクスプレス(撮影・村上大輔)
Photo By スポニチ

 “西方快車”が香港に12年ぶりのタイトルを運ぶ。「第68回安田記念」(3日、東京)の木曜追いが31日行われ、香港馬ウエスタンエクスプレス(中国表記・西方快車)が東京競馬場で軽快なフットワークを披露した。同レース延べ10度目の挑戦で初タイトルを狙うジョン・サイズ師(63)も揺るぎない手応えをつかんでの出走。マイルG1・2着2回の実績馬が香港勢に06年ブリッシュラック以来の優勝をもたらす勢いだ。

 香港の刺客はまるで借りてきた猫のようにおとなしかった。東京競馬場の馬場入り口で待ち構えるカメラの放列に寝ぼけたような目を向けながら、のんびり歩くウエスタンエクスプレス。ダートコースに入ると、朝の砂浜を散歩するようなゆったりとしたフットワークを伸ばしていく。「あんまりボケッとさせるな!少しは集中させろ!!」。サイズ師の厳命を受けたパン助手が3コーナーの大けやきすぎから促した瞬間だ。550キロ超の栗毛がハミを取って、首を沈めた。すさまじいストライドを繰り出して4F54秒8〜38秒2〜12秒1を馬なりでマーク。借りてきた猫は大虎に変わっていた。

 「いい性格だよね。普段はとってもおとなしい。しかも、素直で人の言うことをよく聞く。どんな状況でも絶対に自分の力だけは出し切る馬なんだ」と語るのが安田記念延べ10度目の挑戦となるサイズ師。追い切り後に再び猫に戻った愛馬に誇らしげな視線を向ける。大食漢ぶりを示すエラのように張った顎。「環境の変化にもお構いなしに、いつでもどこでも、がっちり食べる。来日(5月22日)してからもモリモリだよ。疲れ知らずのタフネスさも大食ぶりから来ているのだろうね」。おとなしく、大食いでタフ。10度目の香港リーディングへ独走中のサイズ師が日本へ連れてきた、遠征に最もふさわしい資質の持ち主だ。「水曜(30日)の体重測定では前走時と同じ554キロ。昨秋の初戦(575キロ)から20キロ以上減った前走もG1で好走しているし、何も問題ない」と続けた。

 コース適性にも感触をつかんでいる。左回りは香港移籍前、オーストラリアのデビュー戦(パケナム競馬場)で勝利。「とても小さな左回りコースの短距離戦でも勝ったんだ。コースの広い東京なら全く問題ない」。前々走のマイルG2では1分32秒9で首差2着。東京の高速馬場にも対応できる時計を持っている。「例年よどみないペースになる安田記念はこの馬の追い込み脚質に合う。私の感覚では安田の流れが遅くなったことなど一度もない」。同レースに延べ9度も出走させてきたサイズ師ならではの見立て。08年5番人気アルマダの2着が最高成績だが、自信ありげに言い放った。「大穴を当てたい人には、ウチの穴馬で幸運が巡ってくるかもよ」。香港からやって来たのは幸運の招き猫、いや、大虎の刺客だ。

続きを表示

この記事のフォト

2018年6月1日のニュース