林満明、障害人生に幕を下ろす…「やり残したことはない」

[ 2018年4月19日 05:30 ]

デビュー33年間の障害人生に幕を下ろす林満明
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 障害騎手の大ベテラン・林満明(51)が、あと6戦となった障害通算2000回騎乗を区切りに現役を引退する。30年以上の騎手人生をジャンプレースにささげてきた職人。2着に敗れた最後のG1騎乗を終え、引退への経緯、思い出話、そして障害レースへの熱き思いを語った。

 14日に行われた中山グランドジャンプ。林にとって最後のG1騎乗。G12勝の相棒アップトゥデイトで、宿敵オジュウチョウサンに挑んだが、2秒4の大差をつけられ2着に敗れた。

 「完敗。アップも最後まで踏ん張っている。あれだけ負けたら諦めもつく。未練なく辞められます」

 デビュー33年目、51歳。障害界を引っ張ってきた大ベテランは、2年前から引き際を考え始めた。

 「乗り鞍の数が減ったのが一番の理由。お世話になっていた調教師や馬主が(引退などで)少なくなってきた。年齢的な衰えは馬がカバーしてくれていたが、そろそろ限界。何か区切りがないと辞められないから、2000回という切りのいい数字を最後の目標に設定しました」

 100回以上の落馬も経験しながら、騎手生活の大部分を障害レースにささげてきた。改めて障害戦への思いを語る。

 「ひと言で言えば“怖い”です。今もゲートインでは心臓がドキドキする。ケガも数え切れない。職業だから仕方なく乗っている面もある。それでも続けてこられた僕にとっての一番の魅力は、同じ馬に続けて乗せてもらえること。調教から携わり、スタッフと一緒に馬をつくって、レースで経験を積む。その積み重ねに喜びがある。最近の平地競走は、すぐに乗り代わってしまうから…」

 数々の名勝負を演じてきた剛腕。一番の思い出は?の問いには意外な答えが返ってきた。

 「忘れられないのは98年中山大障害。アワパラゴン(1番人気)で、大竹柵でひっくり返った(転倒、落馬)。近くで見ていたファンから“林さ〜ん、大丈夫?”って声が掛かった。幸い体は動いたから、起き上がって手を振ったら“バカヤロー、金返せ〜”って。お客さんも大切なお金を賭けているから仕方ないけど、あれは参ったな」

 最後の飛越まで残り6戦。後輩に思いを託し、林は静かにステッキを置く。

 「G1も勝たせてもらったし、やり残したことはない。残りのレースを全力で乗るだけ。後輩たちに言いたいのは“とにかくケガせず無事に回ってこい”と。その上で障害レースを盛り上げてほしいね」。

 ◆林 満明(はやし・みつあき)1966年(昭41)10月31日生まれ、滋賀県出身の51歳。競馬学校1期生として86年3月デビュー。同期は柴田善、石橋師、須貝師、武藤師、岩戸師など。同年16日の阪神1RシマノスピードでJRA初勝利。87年京都大障害・秋(カルストンファスト)で重賞初V。15年中山グランドJ(アップトゥデイト)でJ・G1初制覇。97年に障害18勝を挙げJRA賞・最多勝利障害騎手を受賞。17年6月17日東京4Rで嘉堂信雄元騎手の最多障害騎乗記録を更新(1959回)。JRA通算3604戦274勝(障害1994戦194勝、平地1610戦80勝、18日現在)。

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