田中博新調教師「憧れ凱旋門賞」Vへ第一歩

[ 2018年2月28日 05:30 ]

開業前の厩舎で飛躍を誓う田中博師
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 異色の国際派トレーナーがデビューする。騎手としてG1も制した田中博康師(32)が、現役最年少調教師として3月1日から美浦で開業。フランスを筆頭に世界各国で経験を積んだ若き指揮官は、夢に掲げる「凱旋門賞」制覇へ歩み始める。

 関係者からの電話に、内装業者とのやりとり。3月1日に迫る美浦での本格開業を前に、田中博師は厩舎でせわしなく動き回っていた。「いよいよって感じでワクワクしてきましたね」。騎手としての余力を残しながら、若干32歳での開業。それは壮大な夢に向けての決断だった。

 06年の騎手デビューは高橋祥厩舎から。自身の将来像を描くきっかけは間近で見た師匠の姿だった。「とにかく仕事ぶりが格好よかった。最初があの厩舎じゃなかったらまた違う人生だったかもしれない」。同厩舎のタイキエンデバーで初勝利し、07年にはキャリアハイの44勝、09年エリザベス女王杯(クィーンスプマンテ)ではG1初制覇も果たした。しかし、翌10年は13勝と数字を落とすとトンネルの出口を探す日々が始まった。「現状を打破したい気持ちでいっぱいだった。そんな時、豊さん(武)に助言を頂いたんです」。

 海外経験が豊富な武豊が提案したフランスでの武者修行。一念発起で渡仏し、現地で数々の厩舎仕事に携わることになった。「日本との違いには驚いた。向こうは騎手が馬を引いて競馬場に持って行き、レースに乗って連れて帰ったりする。厩舎の仕事に垣根がないんですよ」。06年のレイルリンクなど凱旋門賞7勝のA・ファーブル厩舎でも一スタッフとして働き「騎手を含めた全員で馬をつくり上げている感じだった。あの雰囲気が理想ですね」と振り返った。あるフランス人関係者の言葉も契機になった。「ミツマサは凄い調教師になる。勉強した方がいい」。

 “ミツマサ”とは今週の弥生賞に有力馬ダノンプレミアムを送り出す中内田充正師。同師は昨年JRA史上最速での100勝を達成し、最高勝率(21・4%)のタイトルも手にした。「厩舎の開業年に仕事を手伝わせてもらったんです。その時、楽しいな、調教師になりたいなとはっきり感じましたね」。騎手業を続けながらの猛勉強で16年調教師試験を一発クリア。技術調教師として過ごした昨年は7カ国を巡り、見識を広めた。「これまでコロコロといろいろな所に行きました。だけど、今は逆に良かったと思えます」

 現役最年少での調教師デビュー。強みは理解している。「単純に時間がありますから。軽くは言えないけど、憧れの凱旋門賞制覇へ向けて頑張りたい」。必然ともいえるフランス最高峰レースへの思い。今週末、トリニティハート(牝3)でデビューの可能性がある国際派トレーナーは、夢への第一歩を踏み出す。

 ◆田中 博調教師 85年生まれ、埼玉県出身。06年に高橋祥厩舎から騎手としてデビュー。「凄く記憶に残っている」という同厩舎所属のタイキエンデバーで初勝利(06年3月18日中京6R)を挙げる。09年にシルクメビウスで重賞初勝利(ユニコーンS)を決めると、同年エリザベス女王杯を11番人気クィーンスプマンテで逃げ切り、うれしいG1初制覇。その後、11年にフランスへ約9カ月間の武者修行へ。さまざまな厩舎の仕事を手伝いながら現地のレースで勝利も挙げた。17年の引退までにJRA通算3727戦129勝、重賞3勝。16年12月にJRA調教師免許試験に一発で合格すると、技術調教師だった昨年は米国、豪州、香港、ドバイ、フランス、英国、アイルランドで競馬を勉強した。「武豊さんに乗ってもらえるような馬をつくりたい」と意気込む若き指揮官。厩舎はくしくもクィーンスプマンテを管理した小島茂師の元厩舎(小島茂師は新厩舎に引っ越し)となる。

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