【天皇賞】武豊、ブラック出遅れも神騎乗で盾14勝 残り2戦「勝って終わる」

[ 2017年10月30日 05:52 ]

両手を広げて待ち構える北島三郎オーナー(右)の元に歩み寄るキタサンブラックと武豊
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 記録男がまた新たな勲章を手にした。東京競馬場で行われた「天皇賞・秋」で、キタサンブラックを春秋連覇へと導いた武豊(48)は、通算14度目の盾制覇。出遅れを挽回しての好騎乗が、ファンを魅了し、北島三郎オーナーは感激の涙で出迎えた。年内での引退を発表しているブラックは、ラスト3戦の初戦をまずは突破。名手のエスコートでジャパンC(11月26日、東京)、有馬記念(12月24日、中山)へと続く有終ロードを突き進む。

 これが「平成の盾男」の真骨頂。武豊が、まさに神騎乗で通算14度目の「盾」を手中に収めた。「ゲートが開く前に突進してしまい、前扉にぶつかってしまった」。そう振り返ったように、キタサンブラックは出遅れて、スタート直後は後方から2番手の位置。雨の中詰め掛けた6万3000のファンがどよめく中、数々の修羅場を経験しビッグタイトルを次々と獲得してきた名手に焦りはなかった。内ラチ沿いに導くと、向正面に出る地点で中団まで浮上。水しぶきが飛ぶ極悪馬場。荒れた内を嫌ったライバル勢を尻目に、空いたインからスルスルと位置を押し上げていった。

 「特殊な芝だったが、返し馬の感じでこなせると思った。道中の手応えも抜群。他馬が内に殺到する気配もなかったので、外に出す気はなかった。リスクはあるが、思い切って内を突いた」。ライバルが大きく回ったコーナーを、最内から最小半径でクリアすると、直線入り口で自然と先頭へ。この時点で勝負は決した。残り200メートル。進路を切り替えたサトノクラウンが内から並びかけたが、抜かせない。「クラウンの蹄音は聞こえていた。先頭に立って気を抜いたが、相手が来ればもうひと伸びする。必死だったが、冷静に対処できた」。食い下がるクラウンを“利用”する形で、最後の踏ん張りを引き出した。

 14度目の天皇賞制覇を、武豊は「僕にとっても凄く大きな1勝」と表現した。演歌界のスーパースター・北島三郎の所有馬で、これまでとは異質の注目度。宝塚記念の不可解な敗戦もあり、重圧を背負っての一戦。「結果を出せてホッとしている。今日はこの馬らしい強さを見せられてよかった」と表情を緩めたのは本音だ。

 数々の名馬の背中を知る名手が「普通の馬にはない体の強さがある」と評するブラック。雨中の激闘で、その強みを最大限に引き出した。コンビを組むのは残り2戦。「これだけの馬。勝って終わりたい。騎手としてできる限りのことをしたい」。日本競馬界が誇る至宝の腕が、ブラックを最高の花道へと導く。

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