【G1温故知新】1996年NHKマイルC優勝 タイキフォーチュン

[ 2017年5月3日 06:30 ]

タイキフォーチュンでG1制覇を果たし、笑顔を見せる柴田善臣
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 G1の過去の勝ち馬や惜しくも力及ばなかった馬、記録以上に記憶に残る馬たちを回顧し、今年のレースの注目馬や見どころを探る「G1温故知新」。第18回は1996年のNHKマイルカップにおいて当時の3歳馬としては驚異的なタイムで駆け抜け、優勝を果たした外国産馬タイキフォーチュン。

 かつてのNHKマイルCはマル外天国だった――。何しろ第1回から第6回まで、内国産馬は2度の3着が最高着順というありさま。当時は3連複や3連単がなく、内国産馬はまさに“馬券的に用なし”だったのである。その風向きが一変したのが2002年の第7回。のちのダービー馬タニノギムレットが圧倒的1番人気になり(3着)、トニービン産駒のテレグノシスが優勝した回だ。この回以降、優勝馬の顔ぶれは全て内国産馬で占められている。

 それでもなお、ベテランファンの間で「外車はエンジンが違う」という漠然とした印象が根強いのは、NHKマイルCの初代優勝馬タイキフォーチュンの影響ではないだろうか?競走馬の能力を最も分かりやすく示す指標は勝ちタイムである。いにしえのマルゼンスキーと同じように、タイキフォーチュンが「外車」のイメージ作りに寄与している要因は、まさしくNHKマイルCで叩き出した驚異的なタイムにほかならない。

 1996年5月12日の第1回NHKマイルCの出走馬18頭中、外国産馬は14頭。そのマル外軍団の総大将として戦前期待されていたのが、3戦無敗の仏国産牝馬ファビラスラフインであった。豊かなスピードを誇りながらも、奥深い血統背景に恵まれた同馬は、この新設G1の初代優勝馬になるだけの資格が十分あるように思えた。他にも弥生賞2着から臨むツクバシンフォニーや、アーリントンC勝ちのスギノハヤカゼなどマル外軍団は多士済々。柴田善臣が鞍上のタイキフォーチュンは、前述の外国産馬3傑に次ぐ人気を得ていた。

 タイキフォーチュンは2歳時の葉牡丹賞において芝2000メートルのレコードタイムを記録するなど、高速馬場には自信を持っていた。その反面走りのストライドが大きく、3つの勝ち鞍は全て千八以上の距離。前走の毎日杯も当時は芝2000メートルで、その毎日杯をあまりにも鮮やかに勝ってしまったものだから、余計にマイルは不安に思われた。

 ところが、この距離経験が本番で大いに生きた。快速を誇るバンブーピノがファビラスラフインを内から制し、前半5F56秒7という破滅的ラップを刻む。その逃げっぷりが本命馬の失速を演出し、中距離実績ある馬たちの台頭を呼び寄せた。直線に入ると、馬場の真ん中からタイキフォーチュンが突き抜ける。ゴール前でツクバシンフォニーが詰め寄ったが、柴田が「最後は遊んでいた」と語るほどの余裕を持って快勝。勝ちタイムは1分32秒6。当時の安田記念レコードと0秒2差で、3歳戦としては異様とすら思える高速決着であった。

 タイキフォーチュンの血統面から“温故知新”を試みるのは、彼の半妹の孫で2015年の優勝馬クラリティスカイの例があるから二番煎じ。というわけで人的背景から勝ち馬を導き出したい。五十路を迎えた柴田善臣のNHKマイルC2度目の制覇はいまだ成っていない。ヤマニンゼファーやジャスタウェイで安田記念優勝を果たしているように、東京千六は柴田にお似合いの舞台。ブレスジャーニーで昨年勝ったサウジアラビアRCも同条件だ。そして柴田の騎乗馬はディバインコード。強烈な逃げ馬が見当たらない今年のNHKマイルC。堅実さが売りの馬だけに、先行して器用に立ち回れば金星もあり得ると考えるが、いかがか。

(文中の馬齢表記は新表記で統一)

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