【G1温故知新】2001年産経大阪杯4着 テイエムオペラオー
今年からG1に昇格した大阪杯が4月2日に阪神競馬場で開催される。G1の過去の勝ち馬や惜しくも力及ばなかった馬、記録以上に記憶に残る馬たちを回顧し、今年のレースの注目馬や見どころを探る「G1温故知新」。第14回は2001年の産経大阪杯で単勝オッズ1・3倍の圧倒的1番人気に推されながらも、人気薄トーホウドリームの前にまさかの4着に敗れたテイエムオペラオーの栄光と挫折の軌跡を振り返る。
2000年、テイエムオペラオーが日本競馬に過去に例のない金字塔を打ち立てた。前年の有馬記念でグラスワンダーとスペシャルウィークの歴史的名勝負に肉薄する3着に健闘し、世代トップの実力は証明済み。それだけで飽き足りなかった彼は天皇賞・春、宝塚記念、天皇賞・秋、ジャパンC、有馬記念のG1を総なめにするという “古馬王道路線グランドスラム”に挑戦し、見事に達成した。
春先のG2を連勝。天皇賞・春を危なげなく制覇すると、デビュー戦以来のパートナーである22歳の和田竜二は、レース後「今年はもう負けないつもり」と言い放った。返す刀で宝塚記念も制したテイエムオペラオー。彼の成長と若き和田の気合が噛み合い、その後も快進撃は続いた。
天皇賞・秋は「1番人気は勝てない」というジンクスと不利な外枠に苦心したが、終わってみれば完勝。ジャパンCも宝塚記念&秋天と2着に食い下がっていたメイショウドトウや海外馬ファンタスティックライトを完封。着差こそ首差だったが、盤石のレース運びだった。圧巻は有馬記念だ。15頭による“包囲網”を直線も半ばというところで突き破り、お馴染みのドトウと伏兵ダイワテキサスをねじ伏せて勝利。奇跡的な末脚と胆力でグランドスラムの偉業を果たしたのである。
あまりの強さに「来秋の凱旋門賞でも…」という声も出た。彼の血統背景を見るに自然な流れとも言えたが、オーナーサイドが乗り気でなく、翌年春も国内王道路線をひた走ることとなる。ひとまず目標に掲げた天皇賞3連覇。その叩き台として出走したのが、当時G2の産経大阪杯だった。
エアシャカール&アグネスフライトという前年のクラシックホースがそろってはいたが、ともに実力を疑問視されており、2番人気をアメリカンボスに譲っていた。1番人気はもちろんテイエムオペラオー。今思えば、臨戦過程は決して万全とは言えなかったのだが、その実力からすれば、それが致命傷になるとは思いもしなかったはずだ。
2001年4月1日の産経大阪杯。テイエムオペラオーは道中からアドマイヤボスに執拗なまでに競り掛けられた。4コーナーで和田の手が激しく動く。つば競り合いの末、一度は先頭に立った直線。しかし、彼にとってこの日のゴール板はあまりに遠かった。外からエアシャカール、さらには安藤勝己が駆る9番人気トーホウドリームの強襲に遭い、絶対王者は馬券圏外の4着に敗れた。阪神競馬場でさく裂した“アンカツマジック”が、結果的にオペラオー政権の終わりの始まりを告げることとなった。
結局、この年のG1タイトルは春天だけ。失意のオペラオーは2年連続で王道路線を完走した誇りを胸にターフを去った。現役時代の相手関係や、種牡馬としての失敗などもあり、彼の軌跡はその功績に比べ過小評価されている気がしてならない。だが、彼が戦った古馬G1・5戦を全勝する馬はおろか、現在では完走する馬すらほとんどいないという事実こそ、テイエムオペラオーがまさしく歴史的名馬だったことを物語っている。
今年から新設G1となった大阪杯に、オペラオー終生の友であった和田が挑む。騎乗馬はミッキーロケットだ。3歳夏からメキメキと力をつけ、古馬になって早々にG2を制した同馬。出遅れ癖が玉にキズだが、展開次第ではG1に手が届いてもおかしくはない。鞍上の和田はオペラオーで制覇した2001年の春天以来となる中央G1勝ちを狙う。安定した強さを誇るキタサンブラック、そしてダービー馬マカヒキなど強敵がそろったが、和田はあの時のテイエムオペラオーの雪辱を果たし、ミッキーロケットをG1の高みへと昇らせることが出来るだろうか。
(文中の馬齢表記は新表記で統一)
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