【高松宮記念】メラグラーナ100点!左肩に刻まれた勝利の刻印

[ 2017年3月22日 05:30 ]

鈴木氏が100点をつけたメラグラーナ。左肩に刻まれた印が特徴的
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 左肩に浮かぶ勝利の刻印!?鈴木康弘元調教師がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第47回高松宮記念(26日、中京)ではメラグラーナ、フィエロ、レッドファルクスを満点評価した。中でも達眼が捉えたのはメラグラーナの異色ボディー。3連勝で短距離王になり得るオーストラリア産馬だ。

 メラグラーナの左肩に刻まれている謎めいた模様。埋蔵金の行方を示す暗号なのか。ミステリー小説が好きな読者ならこのアラビア文字のような白い刻印(写真参照)に興味津々でしょうが、実は個体を識別するための押印。かつては日本でも生後間もない競走馬の後肢に焼き印が押されました。例えば、ハイセイコーの焼き印は「H」。メラグラーナが生まれたオーストラリアでは左肩に生産牧場のブランドマーク、右肩に生年などが刻印される。痛がらないようにドライアイスや液体窒素を使った凍結烙印(らくいん)が採用されているそうです。

 でも、このオーストラリア産馬に限って言えば、押印なしで個体をすぐに識別できます。非常にユニークな馬体。中距離ホースかと思わせる胴長の体形なのに、飛節は短距離仕様。曲飛と呼ばれる「く」の字形の折りの深い飛節です。こういう曲飛は回転の速いフットワークを生む。ダッシュが利いて、テンからスピードに乗れる。短距離で威力を発揮する飛節なのです。

 キ甲(首と背中の境にある膨らみ)と肩、トモも特徴的です。いずれも岩のように隆起している。スプリンター資質を示す発達ぶり。一見、スラリと胴の長い中距離体形でも、各部位を見ると短距離型。こんなアンバランスさが押印なしでも個体を識別させてくれるのです。

 顔に不釣り合いな大きな耳も特徴的。その左右の耳をしっかり立てて、目線と同じ方角にぴたりと向けている。警戒心が強い。サラブレッドにも賢愚がありますが、賢い馬だと識別できる耳です。G1を勝つには飛び抜けた身体能力と共に賢さも必要。メラグラーナはその両方を備えています。

 左肩の謎めいた刻印はオーストラリアの生産者エミレーツパーク社のブランドマーク。体の隅々に刻まれているのは一流短距離ホースの証です。埋蔵金の代わりに混戦G1の行方を示す刻印かもしれません。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘 1944年(昭19)4月19日、東京生まれの72歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許を取得し、東京競馬場で開業。78年の開場とともに美浦へ。93〜03年には日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなどで27勝。

 ▽達眼メモ 馬の個体識別は毛色や白斑、旋毛(つむじ)など先天的な特徴により照合されてきたが、日本では07年以降の生産馬にマイクロチップ装着を義務化。固有のデータが書き込まれたICチップをたてがみの生え際下方に埋め込み、読み取り器で識別する。欧州でもマイクロチップが導入されているが、北米の一部では上唇裏側の入れ墨、オセアニアでは皮膚の凍結で白色毛を再生させる凍結烙印(押印)も用いる。

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