【立川・ヤングGP】名馬シンザンばりの剛脚!超新星・新山

[ 2016年12月29日 05:30 ]

5冠馬シンザンの写真を持ち闘志みなぎる新山
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 「ヤンググランプリ2016(G2)」(優勝賞金505万円=副賞含む)が29日、東京・立川競輪場の11Rで行われる。成績優秀なデビュー3年未満の若手選手が一発勝負で激突する。今年は未来のスター候補がそろい例年以上にハイレベルな争い。激戦を制すのは今年7月にデビュー最速G3優勝を飾った、みちのくの超新星・新山(しんざん)響平(23=青森)だ。競馬史に伝説を残した名馬シンザンを思わせる剛脚で若手の頂点を目指す。

 競輪界に“シンザン”がすい星のごとく現れた。新山は7月函館でデビュー史上最速、わずか1年20日で記念競輪(G3)を初優勝する新記録を樹立した。11月には競輪祭で初めてG1決勝にも進出(9着)。実績と経験がないデビュー2年目の新鋭が伝説の名馬シンザンをほうふつとさせる剛脚でトップクラスと互角に渡り合った。

 「今年の目標は記念の決勝に乗ることとG1の準決勝だったが、走っているうちにもっと上を狙えると思った。記念を優勝したからといって、まだ何も成し遂げていない。G1の決勝に乗れたのは自分でも早いと思うが、先行でG1を獲るためには、もっと脚力をつけないといけない」。ニューヒーロー誕生と騒がれても23歳は冷静沈着だ。

 中学までは野球少年。3歳年上の兄・将史(26=98期)を追いかけるように八戸工で自転車競技を始めた。素質はすぐに開花。11年アジアジュニア自転車競技大会のチームスプリントで優勝。107期でデビューすると、S級昇進は同期の吉田拓矢や鈴木竜士に遅れたものの、抜群の先行力で瞬く間に出世街道を歩み始めた。

 「野球の頃は、ただガムシャラにやっていたが自転車は体の使い方などを考えながらやっている。パワーだけじゃ前へ進まない。ペダルは回るもの。下に踏み込むだけでは駄目ですから」

 笑顔はあどけなさを残すが素顔は理論派。先輩選手から「新山は大物。将来G1を勝つ器」と太鼓判を押されるほどスケールが大きいレーサーだ。デビュー当時から体重は10キロ以上増え「昔のジーンズがはけない」。心も体も一回り大きく成長している。

 師匠は84年ロサンゼルス五輪で銅メダルを獲得した“ロスの超特急”坂本勉氏(54)。90年立川グランプリを制し一時代を築き上げたレジェンドは、今年のリオ五輪で自転車競技トラック種目の監督を務めた。早くから新山の素質を見抜いていた坂本氏は「トップスピードは強化選手にも引けを取らない。これは普通の選手じゃないと思った」と振り返る。「今は逃げて結果を出すのは当たり前。超一流は勝つことと同時に内容が求められる」とアドバイス。自らが歩んできた王道を弟子に伝え、二人三脚でトレーニングを重ねている。

 シンザンは東京五輪開催に沸いた1964年、戦後初のクラシック3冠を達成した。「東京五輪に出場したい」と話す新山は2020年に日の丸を背負うだけのポテンシャルを秘めている。スター性抜群の金の卵は「いつかは競馬のシンザンに負けないぐらいの知名度になりたい。僕も4年後、(競輪)ダービーを勝てますかね?競輪グランプリだけでなく獲れるモノは何でも獲りたい。全部勝ちたい」。シンザンが「ナタの切れ味」なら新山の先行力はライバルたちを豪快に吹き飛ばす「斧(おの)の切れ味」。ハイスピードでバンクを駆け抜け、スター街道をひた走る。

 ◆新山 響平(しんざん・きょうへい)1993年(平5)11月2日生まれ。青森県八戸市出身の23歳。八戸工高卒。15年7月プロデビュー。通算成績は115戦64勝。通算取得賞金は3728万円。好きな食べ物はインド系のカレーで、岐阜競輪場の選手食堂のカレーがお気に入り。オフの気分転換は選手仲間とのゴルフ。1メートル70、71キロ。血液型A。

 ▽シンザン 61年生まれ。史上2頭目、戦後初のクラシック3冠馬。65年天皇賞・秋、有馬記念も勝ち、5冠馬とも呼ばれる。夏負けや蹄のケガ(シンザン鉄で克服)に悩まされながらも1着を量産。種牡馬となってもミホシンザン、ミナガワマンナの2頭のG1級ホースを輩出した。その後、長く「シンザンを超えろ」が日本競馬界のスローガンに。96年、老衰のため35歳3カ月11日で大往生。これは当時のサラブレッド日本最長寿記録だった。

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