【天皇賞・秋】モーリス100点!目元穏やかで気持ちにゆとり

[ 2016年10月26日 05:30 ]

モーリス
Photo By スポニチ

 穏やかな目は折り合いを可能にする心の鏡だ。鈴木康弘元調教師(72)がG1候補の馬体を診断する「達眼」。第154回天皇賞・秋(30日、東京)では昨年の年度代表馬モーリスを満点評価した。最強マイラーには実績のない2000メートルが大きな壁になるが、達眼が距離克服のポイントとして挙げたのは目つきの変化。秋の盾連覇が懸かるラブリーデイにも100点を付け、ボディーチェックから“2強”が浮かび上がった。

 100人の調教師がモーリスの馬体を見たとすれば、100人全員がマイルのスペシャリストだと言うでしょう。圧倒的な骨量と筋肉量を誇る四角張った体形。胸前もトモ(後肢)も、よろいをまとったようにいかつく、首差しは根が生えたように安定しています。下半身に目を移せば、膝や飛節が極端に発達している。3週後のマイルCSに出走するなら負けようがない、超一流のマイラーを示す姿。2000メートルは本質的に長い。今春と同じ表情をしていれば、距離に壁があると断言していたところです。

 今春の安田記念時はぎりぎりまで減量して試合に臨むボクサーのようなキツい目つきでした。春の香港遠征から千葉・白井で検疫を受け、そのまま東京競馬場入りした影響でしょう。当時の馬体診断で「唯一気になる点」と書きましたが、張り詰めた精神状態が目つきに表れていました。レースでは猛然と掛かりました。ペースの緩急や騎手の巧拙以前に、追い詰められた精神状態だったのでしょう。ところが、今回はキツ過ぎた目つきが穏やかになっています。減量を重ねることなく試合へ臨めるボクサーのような表情。夏から秋にかけて、勝手知ったる牧場、トレセンで調整してきたため気持ちにゆとりが生じたのでしょう。2000メートルの緩やかなペースでも折り合える精神状態です。

 馬体の張りも安田記念を上回っています。当時の馬体診断で「昨年より少しだけ薄くなったように映る」と書いたトモに本来の張りが戻っている。威圧感すら漂わせた昨年のマイルCSと同じ体です。

 東京競馬場の2000メートル戦は直線が長いため他場に比べてごちゃつかず、道中スムーズに流れやすいコース。首尾よく内枠を引き、最初のコーナー(2コーナー)でインのポケットに入れられれば…。距離の壁を克服できるかもしれない。そう思わせる最強マイラーの目つきと体つきです。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日、東京生まれの72歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許を取得し、東京競馬場で開業。78年の開場とともに美浦へ。93~03年には日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。

続きを表示

2016年10月26日のニュース