【菊花賞】ディーマジェスティ95点!ひと夏越して急成長

[ 2016年10月19日 05:30 ]

心身の大きな変化が見えるディーマジェスティの立ち姿
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 菊戦線2強のボディーに明暗。鈴木康弘元調教師(72)がG1候補の馬体を診断する「達眼」。第77回菊花賞(23日、京都)では皐月賞馬ディーマジェスティに95点の最高得点を与えた。達眼がその立ち姿から捉えたのは心身の大きな変化。対するサトノダイヤモンドにはダービーからの成長に疑問符を付け、次位の90点にとどめた。

 菊花賞に挑む3歳馬たちが産声を上げた13年、「プールサイド・デイズ」という米国映画が公開されました。14歳の少年ダンカンが夏の間、別荘地のプールでアルバイトをしながらたくましく成長していくヒューマンストーリー。その10年ほど前に封切られたのが「ウォルター少年と、夏の休日」。14歳のウォルターが大伯父の家に預けられたひと夏を境に大人へ変わっていく青春映画です。サラブレッドも3歳の夏、人間で言えば彼らのような思春期にあたる季節に大きな成長を遂げる。その姿を星の数ほど見てきました。それにしても…。ディーマジェスティの成長には少々驚かされました。

 「前肢が後肢よりも勝った体形」。2冠の懸かったダービーの馬体診断ではこうコメントして、80点の評価にとどめました。ところが、ひと夏越した馬体は前後肢のバランスが見事に調和しています。春には寂しく映ったトモ(後肢)に厚みが増して、丸みを帯びている。素晴らしかった前肢(特に肩の筋肉)に後肢が追いついたのです。

 立ち姿も変化しています。皐月賞、ダービー時には前肢を投げ出すような立ち方でしたが、しっかり四肢が大地をつかんでいる。春とは違ってハミもしっかりくわえ、耳、目、鼻が前方の一点に集中しています。気性も明らかに成長している。平常心を示すようにすらりと垂れた尾。毛ヅヤはさえ、腹周りにはゆとりがある。脚元にも狂いなし。セントライト記念できつい競馬をしたのに反動のかけらも見当たりません。

 5点だけ減点したのは飛節の角度。サンデーサイレンス(SS)系には飛節の深い馬が多いのですが、このディープインパクト産駒は逆に少し浅い。まあ、母の父ブライアンズタイム(BT)の産駒は浅い飛節で活躍したので心配ないでしょう。SSよりもBTの特徴を伝えるがっちりした体形。ステイヤーではありませんが、ゆったり走れる気性なら3000メートルもこなせます。何より評価したいのが3歳夏を越した心身の変化。「プールサイド・デイズ」や「ウォルター少年と、夏の休日」の成長ドラマを地でいくサラブレッドです。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘 1944年(昭19)4月19日、東京生まれの72歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許を取得し、東京競馬場で開業。78年の開場とともに美浦へ。93~03年には日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなどで27勝。

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