【NHKマイルC】Vロード参る!雑草クエスト 花咲かす

[ 2016年5月5日 05:30 ]

ロードクエスト(右)は小島茂師を背に、直線で前の2頭を追走

 春の嵐にも負けない雑草のサラブレッドだ。「第21回NHKマイルC」(8日、東京)の追い切りが4日、美浦トレセンで行われ、昨年の新潟2歳S優勝ロードクエストが圧巻の走りを披露した。皐月賞では8着に敗れたが、(1)地味な血統に宿る根性、(2)詰まった体形に表れるマイラー資質、(3)強い左後肢にうかがえるサウスポーぶりが反撃の3要素。強風を切り裂く動きでG1獲りに前進した。

 朝の美浦トレセンを襲った春の嵐。馬場の脇にたたずむ大けやきが激しく揺れる。笛を吹いたような風の音。方向感覚を失いかけた調教馬が馬道でイレ込みながら耳を盛んに動かしている。「ロードクエストは気にしてなかったみたいですよ。直線は向かい風だったけど、いい感触でした」。手綱を取った小島茂師はヘルメットについた雨のしずくを払いながら涼しい顔で口火を切った。

 雑草魂とも呼ぶべき腹の据わった走りだ。最大瞬間風速18メートルの突風。尾を左右に振られても、Wコースで平然とストライドを伸ばしていく。テスタメント(5歳1000万)、ブライトエンブレム(4歳オープン)の3馬身リードで迎えた直線。手綱を抑えたまま内から猛然と差を詰めた。マイラーを思わせる胴詰まりの馬体が伸縮する。1馬身差まで詰め寄ってゴール。そのままペースを緩めず1コーナーでは強じんな左後肢を踏ん張って2頭を抜き去った。

 「単走で追い切ろうかとも思ったが、目標がいないと走る気にならない馬。2頭を前に置いて追った」と説明する小島茂師。「皐月賞から中2週でもダメージは残っていない。重心を沈めさせるように走らせて負荷をかけた。これで安心してレースを迎えられる」。笑みを浮かべると、つぶやくように語った。「馬は値段通りとは限らない」

 億ション並みのサラブレッド売買も珍しくない時代にロードクエストの価格は約626万円。公営・岩手で安い賞金をこつこつ積み上げた母マツリダワルツが北海道・様似町で産み落とした。血統は地味でも、この安馬には春の嵐に動じない雑草魂がある。「夏型なのか、気温の上昇とともに毛ヅヤも馬体の張りも良くなってきた。右よりも左トモのほうが強いから(東京の)左回りコースは合う。2歳時に緩かったトモがギュッと締まって、マイラーっぽい体形になった」(同師)という。

 皐月賞では14番枠からせかせて内ラチに寄せたためハミをかんだ。「今度はせかせずに、でんと構えて本来の直線勝負。逃げ切られたら仕方がない。それで届くかどうかです」。ノーステッキで最後方から4馬身突き抜けた昨年の新潟2歳Sの再現へ。雑草に咲くマイルの花。春の嵐が去った後には栄光の日差しが降り注ぐ。

 ◇サウスポー 東京、新潟、中京の左回りコースは左手前(左前肢と右後肢を軸にした走り)でコーナーを回り、直線で右手前(右前肢と左後肢を軸にした走り)に替わる。そのため左後肢が強い馬は直線のラストスパートで踏ん張りが利く。

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