【有馬記念】ゴールド100点 落ち着き物語る“幸腹”呼ぶ体

[ 2015年12月23日 05:30 ]

有馬記念に出走するゴールドシップ

 有終の白い輝きだ。鈴木康弘元調教師(71)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。「第60回有馬記念」ではゴールドシップを唯一、満点採点した。好走と凡走を繰り返す希代のクセ馬は最高の馬体でラストランに臨む。

 先週、栗東でゴールドシップの馬房をのぞき込んだ時でした。馬房の奥でたたずんでいた芦毛馬が私に向かって目をむき、耳を絞ってきました。威嚇や反抗のしぐさ。至近距離にいれば飛び掛かってきたでしょう。荒ぶる気性、むき出しの敵対心。そんな面がプラスに転じれば、G1・6勝を挙げた峻烈(しゅんれつ)な闘争心となります。マイナスに転じれば前走・ジャパンCの結果を招きます。

 直線伸びきれずに10着。ガス欠で脚が上がったわけではありません。ただ、向こうを張っていた。「追われても俺は本気で走らねえぞ」と言わんばかりに鞍上の手綱に逆らっているように映りました。メンコ(覆面)を着用しているため確認できませんが、耳をいっぱいに絞っていたはず。そんな反抗心が名騎手たちをてこずらせてきました。とはいえ、馬っぷりは断トツです。

 野性味あふれる太い首、たぐるような走法を生み出す骨量豊富な肩、衰えのないトモ(後肢)の筋肉、円熟を示す盛り上がったキコウ(首と背の間にある突起部分)。前走の馬体診断で満点をつけた写真のコピーを見ているようです。ただ一点を除いて…。

 前走との違いは腹周りです。ふっくらとして、より男馬らしい体になっています。前走時は宝塚記念の出遅れでゲート再審査を課されました。何度も繰り返した発馬練習がストレスだったのでしょう。腹が少し巻き上がり気味になった。ゲート練習から解放された今回は腹に余裕が生まれているのです。立ち姿にも前走以上に余裕がある。体と心のバランスが取れている状態と言えます。

 あとは、レースで鞍上に反抗して耳を絞らないかどうか。こればかりは神のみぞ知るですが、ラストランにふさわしい最高の雰囲気だと断言できます。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘 1944年(昭19)4月19日、東京生まれの71歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許を取得し、東京競馬場で開業。78年の開場とともに美浦へ。93~03年には日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリーなどで27勝。

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