【有馬記念】ゴールド知り尽くす今浪厩務員「人生がガラッと変わった」

[ 2015年12月22日 05:30 ]

ゴールドシップ担当の今浪厩務員

 この人の存在なくして今のゴールドシップはあり得なかった。担当者としてゴールドの“プライベート”を知り尽くす今浪厩務員。他の厩舎スタッフが総じて「あの馬は担当したくない」と苦笑いを浮かべる“白い怪物”を、4年半にわたって手掛けてきた。「やっぱり寂しいね。シップに出会って、人生がガラッと変わった。こんな馬に“当たる”なんて思ってなかったから」と口にする。

 横山典は事あるごとに「今浪さんが一番大変だよ。ゴールドシップの馬房に入るなんて、恐ろしくて俺にはできないから」と口にしていた。実際、今浪厩務員は「そりゃあ怖いよ。つないでいても、ケツを寄せて壁に押し付けてくるんだ。油断して、蹴られたことも1回か2回ある。つないでなかったら殺されていると思うよ(苦笑い)」

 そんなゴールドだが、レース直後は雰囲気がガラリと変わる。「褒めてほしいのかな。顔を寄せて甘えてくるんだ」。ところが7着に終わった去年の天皇賞・春の後だけは違った。「スタート直前に(係員に)お尻を触られて立ち上がったやろ。怒りが収まらず、レース後も厩舎に引き揚げるまで他の馬を蹴りに行ってたよ」。だからこそ一番感動したのは“三度目の正直”となった今年の天皇賞・春。「何とか天皇賞を勝たせてやりたいと思っていたんだ」とほほ笑んだ。

 「この馬を担当して、夢はこんなにも広がるのかと感じた。重賞を勝ちたい、G1を勝ちたい…。いろんな夢をかなえてくれたけど、次は子供を担当して、シップで勝てなかったレースを勝ちたい。夢には終わりがないんだと感じるね」

 ラストランで望むことはただ一つ。「今回は結果どうこうよりも無事に帰ってきてほしい。それだけだよ」と優しくほほ笑んだ。決して終わりじゃない。この道40年のベテラン厩務員の夢には、まだ続きがある。

 ◆今浪 隆利(いまなみ・たかとし)1958年(昭33)9月20日、福岡県出身の57歳。小倉競馬場の近くで生まれ育ち、名古屋競馬と優駿牧場を経てトレセンへ。内藤繁春厩舎、中尾正厩舎と渡り歩き、09年の開業から須貝厩舎のスタッフに。過去の主な担当馬は「重賞を初めて勝ったシングルロマン(86年京阪杯)とビッグシンボル」。現在はゴールドシップとレッドリヴェールを担当。

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2015年12月22日のニュース