【川口・日本選手権】益 ファン&モトクロス界の夢乗せて走り“ます”

[ 2015年10月30日 05:30 ]

前検で感触を確かめる益

 川口オートのSG「第47回日本選手権」(優勝賞金2000万円=副賞を含む)は30日、5日間の日程で熱戦の幕を開ける。注目は10月に女子レーサー初のS級昇格を果たした益春菜(29=川口)。地元走路で女子初の選手権出場を実現させた快速レディー。超一流のスピードを誇るオート界トップクラスの男子レーサーを相手に、どこまで存在をアピールできるか、視線が集まる。

 益に気後れなどない。13年7月5日に記念すべきプロデビュー戦を飾った思い出の川口走路で、実力日本一を決める最高峰のタイトルを狙うチャンスをつかんだ。「とにかくファンが楽しいと思えるレースがしたい。それは自分が面白いと思えるレースだと考えている」と話す。益にとって面白いレースとは?「それはトップ争いに参加するということでしょう」。柔らかい笑顔の奥に強烈な負けん気がのぞいた。

 真っ向勝負が大好きだ。趣味としていた父の影響で5歳からモトクロスに乗り始めた。「知らないうちにマシンに乗っていた。怖くて仕方なかった」。転機は00年。全日本モトクロス選手権にレディースクラスが創設され、14歳の益は全国を転戦。そしてバイクの面白さに目覚める。思い通りにならない荒れたコースを“人車”一体となって乗り越えるのがたまらなかった。08~11年には4年連続でレディースクラスチャンピオンに君臨した。

 だが、限界も感じていた。モトクロスは素晴らしい競技だが日本において職業とするには厳しい。バイクに乗り続け、職業として成立するのは何か。

 それはオートレースだった。32期生の募集を見て、オートの門を叩いた。無事合格。昨年12月までのデビュー約1年半は、通常の1級車(600CC)よりも排気量が少ない「2級車(500CC)」で経験を積んだ。「レースのこと、整備のこと。いろいろ把握できずに苦しかった」と振り返るが、徐々に地力を蓄えていった。そして、満を持して1級車デビュー。いきなり今年1月2~5日の川口普通開催でプロ初優勝を飾り、度肝を抜いた。

 3月には船橋で4日間オール1着の完全優勝。いい波に乗り始めた。「経験を重ね、吸収する力がついて、いつの間にか充実した仕事ができるようになった。そんな感じ」。人車一体の感触を完全に取り戻した。今月7日には川口普通開催で通算3回目のV。そして今回、9月の伊勢崎オートGPに続く2度目のSGに挑む。

 益の願いはオートで活躍し、そんな自分の基礎をつくったのはモトクロスであるとアピールすること。それが長年お世話になったモトクロス業界への恩返しだ。多くの人の夢を背負って走る益。視線の先には勝利しか見えていない。

 ≪29日の益≫前節の地元開催最終日(20日)に被害を受けて落車。その影響が心配され「フレームを交換。レースでどれだけ動くか未知数」と本人も半信半疑だ。その前節でも「エンジンが粗くてタイヤもハネていた」と課題を残している。ただ、気合は十分で「とにかく練習して乗り込んでいく」と明るく締めくくった。初日8Rは1枠。何が何でも包まれないスタートを決めて1コーナーへ飛び込みたい。

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