【毎日王冠】スピルバーグ 英G1激闘経て成長“随分大人になった”

[ 2015年10月6日 05:30 ]

英国遠征で成長し秋初戦に臨むスピルバーグ

 秋の東京競馬は10~12日の3日間連続開催でスタートする。開幕週のメーン「第66回毎日王冠」(11日)の主役はスピルバーグだ。英国遠征帰りでも万全の仕上がり。同じ藤沢和厩舎に所属したシンボリクリスエス(02、03年)に続く史上2頭目の天皇賞・秋連覇へ、弾みをつける構えだ。

【毎日王冠】

 強い馬をつくりたいなら環境を変えろという。戦前の欧州競馬を席巻したイタリアの馬産家、フェデリコ・テシオの至言である。「見るからに格好いいよな。イギリスに行って随分大人になって帰ってきた」。紅葉が彩る馬道を歩くスピルバーグに藤沢和師が頼もしげな視線を注いでいる。5月の渡英前とは別馬のように引き締まり、筋肉のメリハリが浮き立つ馬体。堂々と落ち着き払った歩様。

 「見知らぬ地での経験は大きいと思う。英国のG1ではダメージが残るほど走っていないから帰国後の調整も楽だった」。5月27日の渡英から6月24日の帰国まで1カ月弱、競馬の本場、英ニューマーケットで過ごした体験は馬道脇で色づく紅葉のようにスピルバーグを成熟させたのだろう。

 「英国に残ってさらに1戦するアイデアもあった。でも、2戦すれば天皇賞・秋が苦しくなる。馬は一年中走れないから」。英G1プリンスオブウェールズS(6着)後、エクリプスS、インターナショナルSと続く英G1を登録だけにとどめた。全ては年頭から目標に掲げてきた秋の天皇賞連覇のため。「スピードとスタミナが問われる東京2000メートルのG1は日本で種牡馬になる上で最も価値がある」。こんな自説を持ち続ける同師は「ゼンノロブロイも秋の天皇賞を使いたかったから英国遠征を1戦(05年インターナショナルS2着)で切り上げた。スピルバーグも来年には引退。限られたチャンスを最大に生かしたい」と続けた。

 1度の敗戦には複数の敗因があるという。同師は英G1の敗因を2つ挙げた。「英国の調教馬もスクラッチ(出走回避)するほど馬場が硬かった。日本とは異なる粘土質の硬さを気にしていた」。もうひとつの敗因は右回り。「(同じ右回り阪神の)大阪杯でもそうだったが、(4コーナーで)内にモタれた」。そんな癖を事前に伝えられたスミヨンは右ムチで矯正しようとしたが、致命的なロスとなった。

 巻き返しを図る秋の舞台は通算6勝の全てを挙げた東京競馬場。毎日王冠の先にはシンボリクリスエスしか達成していない秋の盾連覇への戦いも待っている。「それにしても格好いいよな」。英国遠征を経て紅葉のように色づく鹿毛の馬体に同師は再び頼もしげな視線を向けた。

 ≪プリンスオブウェールズS・VTR≫道中は後方を追走し持ち味の末脚勝負に懸けたが、直線伸び切れず6着(9頭立て)。鞍上のスミヨンは「ゴーサインを出してからもいい反応を示さず、馬場の硬さを気にしていたのかもしれない」とコメントした。

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