49歳ベテラン悲願、中舘が調教師合格 骨折が転機「騎手に未練ない」

[ 2014年12月12日 05:30 ]

調教師試験に合格し、笑顔でポーズをとる中舘

 JRAは11日、平成27年度新規調教師試験の合格者を発表した。関東ではG1・3勝を挙げた中舘英二騎手(49)ら3人、関西でも渡辺薫彦元騎手(39)ら3人が合格。競争倍率19・5倍(出願者117人)の超難関試験を突破した6人には、来年3月1日付で調教師免許が交付される。

 “逃げ馬の名手”と呼ばれたベテランジョッキーが、ステッキの代わりにペンを握った足掛け2年の受験生活。記者会見に臨んだ中舘は「調教師試験が何度も夢にまで出てきた。自信は全然なかったけど、合格発表の午前10時に着信がいっぱい入ってきて…。受かって良かった」と満面の笑みを浮かべた。

 希代の逃げ馬ツインターボ、女傑ヒシアマゾンなど、個性派ホースとコンビを組んだ49歳のベテランに転機が訪れたのは12年2月。京都競馬場で落馬し、背骨骨折の重傷を負った。「もう乗り役はきついかな」。2カ月後に復帰したが、当時47歳の肉体は悲鳴を上げていた。そして10年前から意識し始めたという調教師への転身に本腰を入れた。

 だが、初受験した昨年は不合格。競馬関係法規から労働関係法規、衛生学まで多岐にわたる試験の競争率はおよそ20倍の難関。「勉強から離れて何十年もたっているし、年を取ると記憶力も鈍ってくるので苦労した。せっかく覚えてもレースに騎乗した途端に記憶が飛んでしまう」

 今年5月中旬からはレースを離れて受験勉強に没頭した。自宅では集中できないため、平日は静かな調整ルームに通って朝から晩まで参考書にかじりつく日々。「机に向かった瞬間から、出ムチの入れっぱなしだった」。逃げ馬に入れたカツを自らに叩き込み、9月の1次試験(筆記=出願117人中24人合格)、今月2~4日の2次試験(口頭)を突破した。

 「(騎手としての晩年は)ローカルに回って、ぎりぎりのところで勝たなきゃいけない馬に乗ってきた。調教師になってもそういう馬をしっかり勝たせたい」。騎手生活30年でJRA通算1万7695戦1823勝。「随分乗せてもらったから騎手に未練はない」とクールに語るが、思い出の馬を問われた途端に感極まった表情を浮かべた。「アサヒエンペラーです」。デビュー3年目の86年に皐月賞、ダービー連続3着。騎手としての原点になった“無冠の大器”を胸に第2の競馬人生を踏み出す。

 ◆中舘 英二(なかだて・えいじ)1965年(昭40)7月22日、東京都出身の49歳。84年に騎手デビュー。JRA重賞30勝。同G1・3勝(93年阪神3歳牝馬S、94年エリザベス女王杯=ヒシアマゾン、07年スプリンターズS=アストンマーチャン)

 ◆斎藤 崇史(さいとう・たかし)1982年(昭57)8月29日、神奈川県出身の32歳。08年から松永幹夫厩舎に所属し、09年秋華賞を制したレッドディザイアを担当。

 ◆池上 昌和(いけがみ・まさかず)1974年(昭49)10月6日、東京都出身の40歳。父の池上昌弘調教師の下で14年間、厩務員と調教助手として経験を積んだ。

 ◆竹内 正洋(たけうち・まさひろ)1979年(昭54)1月11日、千葉県出身の35歳。国枝栄厩舎、矢野照正厩舎、奥村武厩舎で従事。

続きを表示

この記事のフォト

2014年12月12日のニュース