【凱旋門賞】ハープスター「普通」の凄さ 仏でも変わらぬ走り

[ 2014年10月2日 05:30 ]

芝コースで追い切られたハープスター(JRA提供)

 今週は世界最高峰のフランスG1凱旋門賞(日本時間5日午後11時30分発走、ロンシャン競馬場)の最終追い切りに注目。日本からは3頭が挑戦するが、日本の牝馬として、初めて同レースに挑むハープスター(牝3=松田博)に焦点を当てた。

 壮大な草原を包み込んだ霧に朝日の光が乱反射するシャンティイのコワイラフォレ調教場芝コース。フランス競馬の小林智厩舎の馬をパートナーに、向正面から併走でスタートしたハープスターの姿が白いモヤの中に消えた。次に視界に現れたのは1000メートルあるホームストレートの、残り約600メートル地点。既にパートナーの姿は5馬身以上も後方。結果的に単走の形になったが手綱をしっかりしごかれ、残り200メートルから右ステッキ3発。負荷をしっかりと掛けられ、ダイナミックなフォームで駆け抜けた。

 日本から初めて来た3歳牝馬の注目度は抜群。追い切り後の共同会見にはテレビカメラ10台、世界各国のメディア約70人が詰めかけた。松田博師は「予定通りの調教ができた。普段と変わりない。順調だよ」と満足そうな表情を浮かべた。「普通の状態を維持することが、実は一番難しい」。常々そう語る指揮官らしい第一声。「レースに使えるかどうか、というレベルだった(前走の)札幌記念の時とは全然違う」と、状態面に胸を張った。

 2着に敗れたオークスのレース中、前走・札幌記念の最終追い切りと、左前の蹄鉄が外れるアクシデントが続いた。これは蹄鉄を打ちつける爪が、他の馬よりも弱いから起こったこと。この弱点については「今は問題ない。もちろん細心の注意はしているが」と話し、爪も良好な状態をキープしている。

 松田博師にとってフランスは33年ぶり。開業前の81年、技術調教師として研修に訪れて以来のシャンティイだ。「あの頃と何も変わっていないな」。遠い記憶が鮮明によみがえり感慨に浸ったが、ここまでたどり着く道は平たんではなかった。開業後もハープスターの祖母である2冠馬ベガ、10年の年度代表馬ブエナビスタにフランス遠征のプランが浮上したが、いずれも態勢が整わず断念した。

 「日本の馬が何度も勝とう勝とうと挑戦して、残念な結果に終わってきたレース。最初に獲ってみたいという気持ちは当然あるさ」

 2年後の2月で70歳定年を迎える松田博師。調教師生活34年目にして、ついに立つ凱旋門賞の舞台。攻めの姿勢を貫いて、調教師人生の集大成とする。

 ▼凱旋門賞 1920年、第1次世界大戦で衰退したフランス競馬再興を掲げて誕生した国際競走で、世界中のホースマンが目標とする世界最高峰のレースの一つ。創設以来芝2400メートルで行われており、3歳以上の牡・牝馬が出走できる(セン馬は出走できない)。負担重量は3歳牡馬が56キロ、4歳以上牡馬が59・5キロで、牝馬はそれぞれ1・5キロ減。フルゲートは20頭。日本馬は過去に延べ16頭が挑戦して、2着が4回ある。今年の総賞金は500万ユーロ(約7億円)で、1着賞金は約285万ユーロ(約4億円)。

 ▼ロンシャン競馬場・芝2400メートル 凱旋門賞スタート地点は1~2コーナー外にあるポケット。スタートして400メートルは平たん。そこから上り坂になり最高点まで約10メートルの高低差を駆け上がる。日本では京都競馬場の3~4コーナーに坂があるが、高低差は4メートルほどだけにそのタフさが分かる。そこからは下り坂。3~4コーナー中間から直線入り口までフォルスストレート(偽りの直線)と呼ばれる直線があるが、ここで仕掛けるとゴール前での粘りに影響する。最後の直線はほぼ平たんで約533メートル。今年こそ日本馬が先頭でゴールを駆け抜けることができるか!?

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