【凱旋門賞】日本勢最大の敵は独「近年屈指の傑作」ノヴェリスト

[ 2013年10月2日 06:00 ]

トレヴの末脚は日本勢にとって脅威だ

 凱旋門賞(6日、フランス・ロンシャン)まで、あと4日。世界を知る男、競馬評論家の合田直弘氏が、今年の世界一決定戦を徹底分析した。オルフェーヴル(牡5=池江)、キズナ(牡3=佐々木)の前に立ちはだかるのは、どの馬なのか。そして日本競馬最大の悲願は成就するのか?

 日本馬にとって最大の敵は、この路線の前半戦の総決算キングジョージを驚異のレコードタイムで制したドイツ調教馬ノヴェリスト(牡4)とみる。一昨年の凱旋門賞馬デインドリームの名を挙げるまでもなく、このところ充実著しい独国のこの路線において、「近年屈指の傑作」と言われているのがノヴェリストだ。ダラカニを交配すべく母がアイルランドに滞在していた時に生まれたため、ノヴェリスト自身は愛国産馬だが、本馬も、母も祖母も、97年から00年まで独国ジョッキークラブCEOを務めたクリストフ・バーグラー氏の生産馬という生粋の独国血脈である。

 デビューから無敗の4連勝で独ダービーに臨んだ際には単勝1・7倍という大本命になった馬で、その独ダービーで2着、続くバーデン大賞で4着となった以外に敗戦がない。高速馬場にも不良馬場にも、ハイペースにもスローペースにも自在に対応できるオールラウンダーで、道中の位置取りは日本馬2頭よりも前になるだけに、この馬に好位から爆発的末脚を使われると、厄介なことになりそうだ。

 1週前の時点でロンシャンの馬場はBon(=良)だが、週後半の木、金曜日に雨予報が出ており、馬場状態は微妙だ。さほどの降雨量にはならず良馬場が維持されるなら、欧州勢の2番手は地元フランスのトレヴ(牝3)になろう。この馬もまた春の仏オークスをトラックレコードで制した馬で、抜けてくる時の切れ味の鋭さは超一級品だ。54・5キロの“恵量”も魅力で、この1年ほど不遇をかこった(※注1)名手F・デットーリ(42=イタリア)による、こん身の手綱さばきに導かれて繰り出すこの馬の末脚も、日本勢にとっては脅威だ。

 逆に馬場が重以下に悪化するようだと、浮上してくるのが愛国調教馬のルーラーオブザワールド(牡3)だろう。キズナの2着となったニエル賞のレースぶりを見ると、いかにもエンジンの掛かりが遅い典型的欧州タイプの競走馬だが、いったんエンジンが掛かれば良い脚を長く粘り強く使える馬だ。時計が掛かり力の勝負になった時は、この馬が欧州2番手となろう。

 今年も複数の管理馬を出走させる凱旋門賞最多勝調教師(※注2)A・ファーブル(67=フランス)が、「ベストチャンスはこの馬」と公言するアンテロ(牡3)も不気味だ。スタミナに一抹の不安があるこの馬を、ここを勝てば凱旋門賞通算勝利単独首位(※注3)となるO・ペリエ騎手(40)がどう乗るかは、大きな見どころの一つだ。

 だが、身びいきではなく客観的に見て、優勝に最も近い位置にいるのは日本馬2頭だ。15日の前哨戦が終わった直後の段階では、トレヴとオルフェーヴルを横並びにしていた大手ブックメーカーのコーラル社も、現在ではオルフェーヴルが単独1番人気で、これを含めブックメーカー全社がオルフェーヴル本命だ。また、キズナも全社が英ダービー馬ルーラーオブザワールドよりも仏ダービー馬アンテロよりも上に評価し、3歳牡馬の代表格とみている。欧州のエキスパートたちが実力を認める2頭に今、必要なのは、ほんの少しの運だけであろうと思う。

 ◆合田 直弘(ごうだ・なおひろ)1959年(昭34)、東京都出身。テレビ東京で競馬番組制作に関わった後、独立し、(有)リージェントを設立。海外競馬に関するさまざまな業務を手掛けている。

 ※注1デットーリの不遇 18年間、主戦を務めたゴドルフィンと専属契約を解消。また、昨年の凱旋門賞デーに抜き打ちで行われたドーピング検査で陽性反応。今年5月19日まで6カ月の騎乗停止となった。

 ※注2凱旋門賞最多勝調教師 ファーブル師が7勝で2位の4勝を圧倒。仏の首位調教師を24度獲得の名伯楽。

 ※注3凱旋門賞最多勝騎手 ペリエは4勝で、ドワイヤベール、ヘッド、サンマルタン、エデリーとともに最多勝タイ。

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