【密着!池江厩舎】(3)日常に隠された強い馬づくりのヒント

[ 2013年5月19日 06:00 ]

結束を誇る池江厩舎のスタッフ

 桜井聖良がお届けする短期連載も3回目に突入!「うちの厩舎のチームワークは日本一」。こうおっしゃっていたのは池江師。それは果たして本当なのか?もしかして先生が知らないだけで何かあるかも…。というわけで、厩舎の仲をじっくりチェックしてきました。

 厩舎にお邪魔して休憩室に入ってみると、とにかくお菓子がいっぱいあります。雰囲気はかなりテキトーな女子校の部活部屋みたいな感じかな(笑い)。特に離れの厩舎は机いっぱいにお菓子が置かれ「これが一番お勧めだよ」とスタッフ同士で勧めていました。仕事中はキリッとした表情でテキパキしながらも、仕事を終えるとお菓子を食べながら会話が弾む弾む。

 「仲がいいですね」。こう尋ねると「そうなんですよ、うちはいつもこんな感じなんですよね」とスタッフの皆さんは笑顔。その隣でお菓子を食べながら他のスタッフも頷く。和やかな雰囲気でした。

 あるスタッフ間には毎朝、こんなやりとりがありました。

 A「おい、B大丈夫か?」
 B「はい!ダメです」
 A「そうか、しっかりしろよ」
 B「はい!」

 最初に聞いた時、調子が悪いのかと心配したのですが、どうやらそれは日課のやりとりだそうです。

 …あ!いけない。お菓子と厩舎スタッフのいちゃいちゃムードの話しかしていないですね(笑い)。

 強いチームワークは仕事でももちろん発揮されていましたよ。午後になると、それぞれの馬の担当者が各馬をチェックし、馬の体調管理、飼い葉作りなど担当している「攻め専」(美浦で言う調教助手)に報告。どこかおかしな部分があった時は「攻め専」が調教師に相談し、今後どうしていくかが決まっていきます。この時の各担当者と「攻め専」とのやりとりにも信頼を感じました。一方的に主張するのではなく、互いを尊重しつつ意見を出し合っているのです。

 厩舎での会話を聞いていると、ベテランが新人の意見にも耳を貸して、その上で意見を言い、話し合っていました。

 互いを尊重し合う姿勢は管理馬に対しても向けられていたのです。馬にもしつけが必要で、時には怒ったり甘やかしを許したりメリハリをつけないといけません。甘く見られてしまうと馬が暴走し危険が伴いますし、競走馬としても扱いづらい馬になってしまいます。そのため、世話をしていて馬が言うことを聞かない時などは、人間が怒った態度を示し「リーダーはこちらですよ」と教えます。ただ、このバランスが非常に難しい。「甘く見られたらいけない」という意識がとても強くなってしまうと、馬へのあたりがきつくなり、少しのことでもこちらの言うことを聞かせようとしがちです。一方、あまりに怒らなさすぎると馬が図に乗る。私の経験を振り返ると、オーストラリアも日本も「甘く見られてはいけない」という意識の強い人が多かったかな。

 だけど、池江厩舎スタッフの多くは、所属馬の扱いがとても上手だったんです。馬のペースを乱さないように心掛けているのです。

 例えば、世話をしに馬房に入っている時。馬が落ち着かなくて暴れていても、それをしかっていったん止めることはありません。ちょっとぐらいなら止めないで馬に話しかけながら世話をするんです。止めなかった、こっちが「危ないかな」とおびえるわけでもなく、無理矢理ねじふせておとなしくさせるわけでもない。各馬の個性を尊重し、受け入れながら接しているのが分かりました。

 メリハリの幅を狭くしながらも馬を気分よくさせ、上手に馬をコントロールする人がいっぱい。池江厩舎を密着取材して一番驚いたのは間違いなくこの点ですね。強い馬を作り続けるヒントは日常にも隠されていたということです。

 あるスタッフに「自分の馬があまり走らなくて、他のスタッフの馬ばかり走ったら嫌ですか?」と意地悪な質問もぶつけてみました。すると「あまり気にしないというか、それは仕方ないと思っています。もっと自分も頑張らなきゃなとは思いますが、嫉妬(しっと)心は持たないですね。それは相手の努力あっての結果ですから」と即答。今回私が撮影した集合写真からも固い絆がうかがえます。池江先生がおっしゃった「チームワークは日本一」という言葉を改めて実感しました。

 次回からは池江調教師への独占インタビュー記事を掲載!オルフェーヴルと凱旋門賞での選択についてお話してくださいました。お楽しみに!

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 ▼桜井 聖良(さくらい・せいら)タレント。競馬予想で来ない人気馬・来る穴馬を選ぶのが得意で、生放送番組でWIN5と予想したメーンレースを全的中させた経験を持つ。2011年から1年半、馬の勉強をする為オーストラリアに留学し、馬のマッサージが特技となった。尊敬する人物は大川慶次郎さんで、憧れる人物は鈴木淑子さん、原良馬さん。

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