【賞金王決定戦】“帰ってきた貴公子”山崎 引退の妻へ激走ささぐ

[ 2012年12月24日 06:00 ]

賞金王決定戦に進出した山崎智也

 優勝賞金1億円を懸けたボートレース最大の祭典「第27回賞金王決定戦」は24日、大阪・住之江ボートレース場で優勝戦が行われる。4号艇の山崎智也(38)は、妻の横西奏恵(38)が19日に電撃引退発表。6年ぶりにボート界最高峰の舞台に帰ってきた「艇界の貴公子」が、10回目の決定戦挑戦でついに頂点に立つとともに、妻の引退に花を添える。

 勝利には絶対に欠かせないツキが今の山崎にはある。賞金王決定戦進出へ、23日のトライアル3回戦で4着以上が条件だった。2コースから手堅く差せば楽にクリアのはずが…。ピットアウトで出遅れ、最も不利な大外6コース発進。1周1コーナーで攻め切ることもできず、道中は離れた最後方。誰もが優出は不可能と思った。だが、3周1コーナーで3着争いを演じていた坪井康晴が転覆。このアクシデントに乗じて4着を確保、決定戦進出を果たしたのだ。「今シリーズは何かついてる。嫁さんの運まで借りているみたい」。遠く徳島県で見守る妻・横西の後押しを感じ取っていた。

 山崎はその甘いマスクと派手なレースぶりから多くの女性ファンをとりこにしてきた。23歳でSG制覇を成し遂げ、いつしか「艇界の貴公子」と呼ばれるまでになった。だが、06年を最後に賞金王決定戦の舞台から遠ざかった。当時は選手が所有していたプロペラの調整競争で出遅れ、結果を出せない日々が続いた。

 長いスランプを脱する契機となったのが、10年12月1日の横西との結婚だ。当時10歳だった横西の娘の父親となり「子供に格好いいところを見せたい」と思ったことが発奮材料となった。直後の10日に2年9カ月ぶりの優勝を飾り、さらに23日には賞金王シリーズで3年ぶりのSG制覇。「結婚して流れが変わった」。家族愛が山崎に再び力を与えたのだ。

 そして今年、ついに頂上決戦の舞台に復帰。得点4位でトライアルを勝ち抜いた。今回の発奮材料は妻の引退だ。絶対的な強さから「永世女王」のキャッチフレーズが付けられた横西だが、夫を陰ながら支えることを決意。レーサーとして最盛期を迎えているにもかかわらず、突然19日に引退を発表した。目立つことが大好きな山崎にとっては、これ以上ない筋書きだ。「嫁さんが舞台を整えてくれた。ボートレースの神様がドラマを求めるなら僕が優勝するはず。子供に黄金のヘルメットをかぶる姿を見せたい。優勝できたら(選手を)辞めてもいい」と断固たる決意で挑む。

 優勝者は賞金1億円と黄金ヘルメットを贈られるほかに、金色のボートでウイニングランを行う同大会。この“ゴールドシップ”が似合うのは、輝きを取り戻した貴公子・山崎智也しかいない。

 ◆山崎 智也(やまざき・ともや)1974年(昭49)3月11日、群馬県生まれの38歳。92年11月デビューの71期生。群馬支部所属。97年8月のモーターボート記念でSG初出場。その1カ月後の全日本選手権でSG初優出、初優勝。通算SG制覇は6回。G1優勝は20回。1メートル65、50キロ。血液型A。

 ▽賞金王決定戦 1986年に創設されたボートレース界最大のレース。毎年12月下旬に開催され、その年の1~11月の獲得賞金上位12人が出場する。トライアルを3戦し、その着順点上位6人が最終日の優勝戦「賞金王決定戦」に進出。9つあるSG(スペシャルグレード)レースの中で最も賞金が高く、優勝者には1億円と黄金のヘルメットが贈られる。

 ▽舟券を買うには 勝舟投票券は全国に24あるボートレース場、場外発売所のボートピア、インターネット、電話投票で購入することができる。ジャパンネット銀行、楽天銀行、三井住友銀行、住信SBIネット銀行、三菱東京UFJ銀行いずれかのネット銀行口座を持っていれば、入会後すぐにネット投票が可能となる。

 ≪女子王座最多タイ3度のV≫山崎の妻で、19日に引退した横西奏恵は長く女子ボートレーサーのトップに君臨してきた。養成所時代には76期生の卒業記念競走で優勝。破った相手の中には今回の賞金王決定戦に出場する瓜生も含まれる。95年のプロデビュー後も、女子No・1を決める「女子王座決定戦」を最多タイの3Vと活躍。史上初の女性SGウイナーとなることはできなかったが、女子で2度もSGの優勝戦に出場したのは横西ただ一人だ。

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