365日 あの頃ヒット曲ランキング 11月

【1972年11月】喝采/ちあきなおみ「どんなアクシデントが降りかかっても歌わなければ」

[ 2011年11月4日 06:00 ]

★72年11月ランキング★
1 女のみち/宮史郎とぴんからトリオ
2 喝采/ちあきなおみ
3 雨/三善英史
4 同級生/森昌子
5 虹をわたって/天地真理
6 小さな体験/郷ひろみ
7 悲しみよこんにちは/麻丘めぐみ
8 あなたの前に僕がいた/フォーリーブス
9 京のにわか雨/小柳ルミ子
10 狂わせたいの/山本リンダ
注目折鶴/千葉紘子
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【喝采/ちあきなおみ】

 憂いを帯びたイントロから印象的だが、ドラマの1シーンを切り取ったような吉田旺の歌詞もインパクト十分。72年の日本レコード大賞受賞曲「喝采」は、当時24歳のちあきの人生の一部分を奇しくも描いたようなものだった。

 レコード歌手としてデビューする前、まだ10代の少女だった頃から歌を歌っていたちあきには10歳以上も年齢が離れた、恋い慕う男性がいた。が、彼は28歳で急死した。彼を思う気持ちは歳月が過ぎても忘れられるものではなかったが、やがて69年にオーディションに合格し「雨に濡れた慕情」でデビュー。「四つのお願い」「X+Y=LOVE」のヒットを飛ばし、押しも押されぬ大スターになった。

 「ステージに上がって歌を歌う以上、自分にどんなアクシデントが降りかかっても私は歌わなければならない。それで私はお客様から“喝采”を浴びる」とちあき。届いた知らせに「黒いふちどり」があっても、ステージは「いつものように幕が開き」マイクを握らなければならない。彼の故郷でのコンサートの際には、この歌を歌いながら、さすがに涙が止まらなかったが、その涙の理由を客席のファンは知らずに、独特の湿り気のあるハスキーボイスで歌うちあきに喝采を送った。

 元俳優の夫が92年に他界して以来、歌手を「自主休業」中。オリジナルアルバムの復刻盤やベスト盤が出されるたび売れ、テレビでも異例の特集が組まれるほど、待望論はこの20年の間、絶えたことがない。それでも一切姿を見せず、親しかった音楽関係者ですら、消息不明とか。不動産や貸しビル業などで生計を立てていると伝えられるが、はっきりしない。

 もともと「人前に出るのは苦手だった」と関係者。歌が好きなことは間違いないが、好き嫌いも激しく、仕事に取り掛かるまでも腰が重かったという。夫が死の間際に「もう歌わなくていいよ」と言ったという話もあるが、定かではない。

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