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【1991年10月】WON’T BE LONG/遅れてきたバブルガム 思わぬ紅白出場

[ 2011年10月23日 06:00 ]

【WON’T BE LONG/バブルガム・ブラーザーズ】

 「まるで演歌みたいな売れ方」(ブラザー・トム)だった。発売したのは90年8月。91年3月に深夜番組で歌ったことから、テレビ局に問い合わせが殺到。有線放送などからジワジワ火がつき始め、この当時各地にできたカラオケボックスで、盛り上がってくるとみんなで大合唱――。

 そんないくつもの要素が絡み合って、デビュー8年目のバブルガム・ブラザーズの名前が、メジャーの音楽シーンに躍り出た。「名前はバブルなのに、バブルが崩壊しても生き残っている異常現象」と自虐的に自らを紹介したブラザー・コンと、かつて警官スタイルで売れたお笑い芸人「小柳トム」こと、ブラザー・トムが歌うノリノリのブラックミュージックのCDシングルはロングセラーとなり、55万枚をセールスした。

 70年代の米国の人気映画「ブルース・ブラザーズ」のスタイルをパロディー化し、軽妙なしゃべりと抜群の歌詞力とをミックスさせた稀有な存在だったが、業界では知る人ぞ知る有名な存在だった。

 2人が“市民権”を得たのは、言葉は悪いが“偶然の事故”のようなものだった。91年末、米国でライブのステージに立っていた2人に、レコード会社から届けられた知らせは「紅白歌合戦への出場」だった。出場予定だったハウンド・ドッグが歌う曲をめぐって、NHK側と見解の相違があり、出場を辞退。ピンチヒッターとして、「WON’T BE…」がヒットした「バブルガム…」にお鉢が回ってきた。

 半ば冗談で曲がヒットした際に「紅白、出たいなあ。親戚にも顔が立つしね」と話していた2人だが、それが現実となった。ブラザー・コンは「神が与えてくれたワンチャンス」と言えば、ブラザー・トムは「紅組で出るの?」ジョークを飛ばして、周囲を笑わせた。

 紅組ではなかったが、白組のトップバッターを務めた2人。ディスコや繁華街のスピーカーから聞こえてきた2人の歌声と音楽が、お茶の間に届いた瞬間だった。
 

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