365日 あの頃ヒット曲ランキング 8月

【1972年8月】旅の宿/よしだたくろう 幸せの絶頂期にリリースしたヒット曲

[ 2011年8月7日 06:00 ]

 ★72年8月ランキング★
1 旅の宿/よしだたくろう
2 どうにもとまらない/山本リンダ
3 さよならをするために/ビリー・バンバン
4 芽ばえ/麻丘めぐみ
5 京のにわか雨/小柳ルミ子
6 ひまわりの小径/チェリッシュ
7 ひとりじゃないの/天地真理
8 あなただけでいい/沢田研二
9 赤色エレジー/あがた森魚
10 鉄橋をわたると涙がはじまる/石橋正次
注目せんせい/森昌子

【旅の宿/よしだたくろう】

 本人が好むと好まざるとにかかわらず、フォークソングの世界でカリスマ的存在になっていた、吉田拓郎(当時の表記は、よしだたくろう)が幸せの絶頂期に出した4枚目のシングル。オリコンチャートで5週連続1位となり、代表曲とされる「結婚しようよ」よりもレコード売り上げは多く、60万枚をセールスした。

 幸せの絶頂というのは、レコード発売の6日前の6月25日、軽井沢で結婚式を挙げた。まさに「結婚しよう」を地で行くような式で、町の教会、音楽仲間を集めて、新郎の髪が肩まで伸びて…と歌の世界そのまま。ファンが500人以上集まり、マスコミも取材に訪れたことから、静かな避暑地は騒然とした。

 その直後に発売された「旅の宿」は夫婦、あるいは恋人同士がひなびた温泉に宿泊した1コマを描写したもの。作詞は拓郎ではなく、後に拓郎と組んで森進一の代表曲の1つ「襟裳岬」を手掛けた岡本おさみ。夫人との青森・蔦温泉への旅行を思い出して描いたものだった。ほのぼのとした雰囲気が拓郎ファン以外にも受け入れられたのがヒットの要員だった。

 ヒットチャートの1位を獲得したことで、若者に人気の拓郎に距離を置いていたNHKもにわかに注目。拓郎に歌番組への出演交渉を行った。

 当時のNHKは歌番組1本に出るのもオーディションが必要だった時代。拓郎はかつてそれに落とされた過去があった。それだけに屈折した感情をもっていたが、NHK側が三顧の礼をもって拓郎を迎え、異例中の異例の5曲を歌わせることにした。「1、2曲テレビで歌ったって、僕の歌は分かってもらえない」という拓郎の主張を受け入れての措置だった。

 交渉がもつれ出演拒否かとも報道されたが、72年12月に生放送の「歌謡グランドショー」に出演。歌った曲は「旅の宿」をはじめ「祭りのあと」や「春だったね」など6曲に。番組の視聴率は通常の1・5倍になったという。

続きを表示

バックナンバー

もっと見る