365日 あの頃ヒット曲ランキング 5月

【1970年5月】今日でお別れ/菅原洋一 粘って歌って曲調変えて歌って大ヒット

[ 2011年5月30日 06:00 ]

年齢を重ねてもその歌声は衰えを知らない菅原洋一
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 ★70年5月ランキング★
1 女のブルース/藤圭子
2 あなたならどうする/いしだあゆみ
3 今日でお別れ/菅原洋一
4 圭子の夢は夜ひらく/藤圭子
5 愛の旅路を/内山田洋とクールファイブ
6 恋ひとすじ/森進一
7 ドリフのほんとにほんとにご苦労さん/ザ・ドリフターズ
8 姿三四郎/姿憲子
9 老人と子供のポルカ/左卜全とひまわりキティーズ
10 逢わずに愛して/内山田洋とクールファイブ
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

 【今日でお別れ/菅原洋一】

 一度授かった曲をじっくり粘り強く歌い込む。深い味わいが出た頃に世の中に浸透し、それがヒットという形で報われる。甘い声で女心を歌う“泣かせの名人”菅原洋一の真骨頂はまさにそこにあった。

 70年春先に有線放送を中心にリクエストが相次いだ「今日でお別れ」はもともと4年前の66年にリリースしたもの。菅原初のヒット曲「知りたくないの」の陰に隠れて、発売当時はあまり話題ににらなかった。

 が、菅原はこの曲が気に入っていた。「発売から3度開いたリサイタルのラストナンバーでも歌った。“いい曲だね”って言ってくれる人も多かった。でも広まらなかった。ちょっと曲が難しすぎた」と菅原。そこで考えたのが曲調を変えること。それまでの8分の6拍子から、4分の3拍子にして69年12月に再度発売した。

 すると「覚えやすくなった」「聴いていて心地よい」と評判になり、年明けから有線放送から火がつき始め、レコード売り上げも上昇。オリコンチャートで最高2位を記録。「聴くと自然と涙が出てくる」という、切ない恋愛を歌ったことで女性の圧倒的な支持を受け、ランキング上位に長くとどまり、息の長いヒット曲に。ついには予想もしなかった大みそかの第12回日本レコード大賞を受賞した。

 思えば「知りたくないの」も複数の歌手との競作となった「恋心」のB面として発売され、菅原がほれ込んだことから事あるごとに歌い続け、大ヒットに導いた。エンジンのかかりは遅いが、一度点火すればメガヒットにしてしまう、菅原の“得意技”が遺憾なく発揮された代表曲の誕生物語だった。

 国立音大で声楽を学び、スタートはタンゴバンド「早川真平とオルケスタ・ティピカ東京」の専属ボーカル。タンゴ自体が日本ではなじみが薄く、なかなか陽の目を見なかったが、歌謡曲を歌うようになると持ち前の高音の美声が生きた。「今日で…」をはじめ、レコード大賞歌唱賞の「誰もいない」、「愛のフィナーレ」などなかにし礼作詞によるヒット曲が多い。

 その風貌から付けられたニックネームが「ハンバーグ」。TBSの料理番組「クッキングパパ」でも長く司会を務めた。

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