365日 あの頃ヒット曲ランキング 5月

【1982年5月】シルエット・ロマンス/大橋純子 “狙って”歌った1曲

[ 2011年5月24日 06:00 ]

82年に2曲目の大ヒットを放った大橋純子
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 ★82年5月ランキング★
1 原宿キッス/田原俊彦
2 渚のバルコニー/松田聖子
3 男の勲章/嶋大輔
4 ふられてBANZAI/近藤真彦
5 NAI・NAI16/シブがき隊
6 シルエット・ロマンス/大橋純子
7 誘惑/中島みゆき
8 夜よ泣かないで/松山千春
9 南十字星/西城秀樹
10 赤道小町ドキッ/山下久美子
注目聖母たちのララバイ/岩崎宏美
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

 【シルエット・ロマンス/大橋純子】

 方針を180度変え「売れることを意識して歌った」。78年にヒットした「たそがれマイ・ラブ」から3年。時のヒットメーカー、来生えつこ、来生たかお姉弟に提供してもらった1曲が、もう一度大橋純子を表舞台に立たせた。

 17枚目のシングル「シルエット・ロマンス」は累計55万枚をセールス。アメリカの恋愛小説を翻訳した「シルエット・ロマン」シリーズのCMソングにも起用され、大橋の温かくもパワフルな歌声に乗った、甘く切ない歌詞が女性を中心に浸透。デビュー9年目にして、また1つ代表曲を手にした。

 発売は81年11月。有線放送やラジオのリクエストがジワジワ浸透し、春先になるとレコードも徐々に売れ始め、5月の声を聞くとベストテンにランキングされるようになった。まさに大橋が狙った通り、ヒットソングとなった。
 しかし、葛藤は常に付きまとった。大橋はバックボーンは8人編成のバンド「美乃家セントラル・ステイション」。バンドへの愛着、信頼は並みではなく、このメンバーと音楽をやることに価値を見出していた。大橋の私生活のパートナーでもある佐藤健の作曲、編曲したものを歌うことで、スタッフが喜んでくれるヒットに結びつけばというのが本音。ヒット曲がなく、精神的に落ち込むのは嫌だったが、「たそがれ…」の時も阿久悠・筒美京平コンビだったように、今回もいわゆる売れっ子コンビの作品。「歌謡曲を歌っているようで抵抗がないわけではなかった」と回想している。

 ヒット曲を世に放った反動はあった。「シルエット…」から2年後、大橋は壁にぶつかった。「曲の浮沈に左右される生活が嫌になった。方向性も違ってきた。音楽を辞めてOLになろうと真剣に考えもした」。

 とりあえず活動を一度休止し、ニューヨークで2年間を過ごした。さまざまな音楽に触れ、浴びるほどミュージカルを鑑賞し、ボイストレーニングにも通った。そこで感じたのはレベルの違い。「日本で歌手をやっていても、アメリカでは二流レベルにも到達していない。ショックだった」。

 だからこそ、もう一度歌に向かい合いたくなった。同時に自分にとっては「たそがれ…」も「シルエット…」も、歌えばお客さんが喜んでくれる大事な宝物だということにも気が付いた。

 かつてはコンサートでもあまり歌いたがらなかった「シルエット・ロマンス」。今では本人も積極的に歌うだけでなく、徳永英明、坂本冬美らもカバーして、発売から30年がたっても輝きを失っていない。

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