365日 あの頃ヒット曲ランキング 5月

【1976年5月】わかって下さい/炭鉱技師・因幡晃の実体験から生まれた失恋ソング

[ 2011年5月11日 06:00 ]

デビュー曲にして大ヒットとなった因幡晃の「わかって下さい」
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 ★76年5月ランキング★
1 ビューティフル・サンデー/田中星児
2 愛に走って/山口百恵
3 未来/岩崎宏美
4 わかって下さい/因幡晃
5 20才の微熱/郷ひろみ
6 春一番/キャンディーズ
7 恋のシーソー・ゲーム/アグネス・チャン
8 木綿のハンカチーフ/太田裕美
9 ウィンクでさよなら/沢田研二
10 北の宿から/都はるみ
注目帰らざる日々/アリス
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

 【わかって下さい/因幡晃】

 秋田・花岡炭鉱で技師として働いていた21歳の若者が過酷な労働の合い間に初めて作った曲でヤマハのポプコンで最優秀曲賞を受賞、さらに世界歌謡祭でも入賞し、デビューすることになった。いきなり60万枚近いレコードが売れ、生活が一変。当初は炭鉱で働きながら歌うつもりだったが、売れっ子になったシンガーソングライターにそれは難しかった。

 工業高校2年の時にギターを初めて手にし、社会人になって交際するようになった女性となくなく別れなければならなかった自己の体験を詞にした。彼女のことが忘れられなく、いつも頭の中にその面影があった。気持ちの整理をつけようと、彼女がどんな思いだったかを追い続けた結果生まれたのが、手紙形式でつづられた「わかって下さい」の世界だった。

 何が根拠なのかは不明だが、OLや女子学生より、水商売や不倫を経験した人がよくレコードを買ったという分析も当時はされ、切々と訴えるように歌うサングラス姿の因幡は「わかって下さい」以降も同様の路線の曲を周囲から求められた。

 しかし、デビュー曲の大ヒットがその後の足かせになったことも事実。「あの歌のインパクトが強くて、別の歌で自分を表現することが許されなかった。因幡晃という歌い手が、あの1曲でレッテルを張られてしまったようだった」。極力、自身の代表曲を歌わなかったり、逆にあの頃に戻ろうとしてみたりと、試行錯誤の日々は長く続いた。

 それが吹っ切れたのは、ヒットから17年が過ぎた93年。「わかって下さい」の返歌とも言える「遠くで見つめているよ」をリリースしてから。女性から手紙を受け取った男性が、その思い出を大切にしつつも、手紙を破り捨てて、新たな一歩を踏み出そうとするもの。それまで女性を主語にしたものが多かったが、男性の気持ちを表現する歌が多くなったのもこの頃だった。

 青春時代を懐かしんで、カラオケで「わかって下さい」を熱唱する中年も多い。今でも時折耳にしたくなる昭和のナンバーである。

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