365日 あの頃ヒット曲ランキング 3月

【1991年3月】翼をください/川村かおり 往年の名曲 20歳の異色歌手で復活

[ 2012年3月2日 06:00 ]

★91年3月ランキング★
1 ラブ・ストーリーは突然に、Oh!Yeah!/小田和正
2 はじまりはいつも雨/ASKA
3 歌えなかったラヴ・ソング/織田裕二
4 さよならだけどさよならじゃない/やまだかつてないWINK
5 Crime of Love/氷室京介
6 翼をください/川村かおり
7 愛は勝つ/KAN
8 想い出の九十九里浜/Mi―Ke
9 ジプシー/児島未散
10 会いたい/沢田知可子
注目ETERNAL WIND/森口博子
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【翼をください/川村かおり】

 70年代の伝説のフォークグループ「赤い鳥」によって大ヒットした「翼をください」を、ロック風にアレンジし、明るいテンポで歌ったのは20歳の川村かおり。91年1月23日にリリース。その日はまさに川村の20回目の誕生日だった。

 ファーストシングル「ZOO」でデビューしてから3年。これが最初のヒットではなかったが、合唱コンクールなどで中高生の間ではおなじみの曲を大胆に模様替えして、新たな生命を吹き込んだ。川村にとっても、20歳を機にさらに次の世界へと飛び立つ決意を込めたカヴァーでもあった。

 元新聞記者で商社マンに転身した日本人の父とロシア人の母親の間に生まれ、小学校6年までモスクワで過ごした。父の仕事の関係で日本へ移ると、待っていたのは壮絶ないじめだったという。

 当時ロシアはまだソ連の時代。自由主義陣営の西側諸国と対峙する、日本から見れば得体の知れない軍事大国だった。そのイメージも手伝い、金髪で目の色が違う川村は理不尽な扱いを受けた。

 83年、中学1年の時に起きたソ連機による大韓航空機撃墜事件では、ただモスクワで生まれ育ったというだけで、学校の教師までが罵声を浴びせ、同級生からは「殺す」とまで言われた。

 そんな時に少女の心を救ったのが音楽だった。都立高校に進学するも、勉強にも身が入らず、出入りしていたのはライブハウス。音楽をやっていたわけではなかったが、17歳で書いた「ZOO」の歌詞が目に留まり、デビューのきっかけをつかんだ。「テーマは殻に閉じこもっている自分やそういう人も決して一人じゃないてこと。どんなに嫌いでも離れることはできない」。そんな思いからつけたタイトルがだった。

 名前をカオリとしてからも、音楽を通じてさまざまな奇跡を起こしてきた川村だったが、乳がんのため09年7月28日、38歳の若さで他界。今でも「翼をください」といえば、本家の赤い鳥ではなく、川村のバージョンが一番いいとする人も少なくない。

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