365日 あの頃ヒット曲ランキング 2月

【1983年2月】氷雨/佳山明生、日野美歌 5年間地道に売り歩いたのに…

[ 2012年2月20日 06:00 ]

 ★83年2月ランキング★
1 秘密の花園/松田聖子
2 ミッドナイト・ステーション/近藤真彦
3 氷雨/佳山明生
4 めだかの兄妹/わらべ
5 氷雨/日野美歌
6 さざんかの宿/大川栄策
7 春なのに/柏原芳恵
8 ドラマテック・レイン/稲垣潤一
9 セカンド・ラブ/中森明菜
10 春風の誘惑/小泉今日子
注目ドリームドリームドリーム/岩井小百合
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【氷雨/佳山明生、日野美歌】

 前年の82年後半から、北海道の有線放送を中心に火が付いた、1曲の演歌が全国的にも広がりをみせ、レコード売り上げも好調。オリコンランキングで同一曲ながら、歌い手が違う2曲がトップ10に入った。
 
 古賀政男最後の門下生、佳山明生とデビュー2年目の日野美歌が歌う「氷雨」は、競作のヒット曲として話題となった。元々佳山が77年のデビュー曲で歌ったもの。佳山はこの曲に惚れ込み、レコードジャケットの写真を替えて実に4度も発売。その間、全国各地の酒場などを回り、地道に売り込んできた。

 佳山の出身地北海道では早い段階から「泣かせるいい曲」と評判は高かった。これを札幌で耳にしたのが、新人歌手の日野。「女の気持ちを実によく分かっている歌詞。男性が歌うより、女性が歌った方が伝わる」と、デビュー2枚目のシングルとしてリリース。これに、ベテラン歌手の箱崎晋一郎も加わった。北海道での仕事で聴く機会があり、今まで滅多にこの曲をと指定してこなかったが、敢えてプロデューサーに志願してレコードに吹き込んだ。

 作詞と作曲はとまりれん。東京でクラブのマスターをしていた時代のことだった。寒い雨の降る日、閉店間際に飛び込んできた女性がいた。カウンターに座るなり、失恋した話を始め、なかなか帰る気配がない…。この女性の姿にとまりの心が動いた。氷雨のそぼ降る夜の出来事をその日のうちに詞にしてしまった。

 これが新人歌手だった佳山のデビュー曲になり、佳山は何度もこの曲をヒットさせようとして、辛抱強く5年もの間歌ってきた。曲がヒットして佳山にもスポットラストは当たったが、とまりが出版権を日野が所属するテイチクと箱崎がいる東芝EMIに売ってしまったため、競作の形に。佳山がコツコツ育てたにもかかわらず、おいしいところを持っていんれたという気持ちは強かった。

 さらに年末の紅白歌合戦では日野が初出場を決めたものの、佳山は選ばれなかった。レコード売り上げでも80万枚以上を記録し、日野は50万枚と大差がついた、のにだった。

 「年末のスケジュールは空けておいて」とまで紅白関係者に言われたという佳山が晴れ舞台を踏めなかったのは、事務所の力関係があったともいえる。日野は大手芸能プロ、佳山のそれは彼しかタレントがいなかった。佳山がこれまでと同じように地方を丁寧に回り、営業活動で曲を育てていったのに対し、日野は積極的にNHKをはじめ、テレビなどに露出する路線の違いもあった。

 とにもかくにも、紅白出場の最大のチャンスを逃した佳山に2度目の好機はまだ巡ってこない。

 

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