365日 あの頃ヒット曲ランキング 1月

【1976年1月】およげ!たいやきくん/子門真人 5万円のバイトで歌い大変なことに

[ 2012年1月5日 06:00 ]

 ★76年1月ランキング★
1 およげ!たいやきくん/子門真人
2 俺たちの旅/中村雅俊
3 あの日にかえりたい/松任谷由実
4 センチメンタル/岩崎宏美
5 白い約束/山口百恵
6 なごり雪/イルカ
7 ハートのエースが出てこない/キャンディーズ
8 弟よ/内藤やす子
9 ゆれてる私/桜田淳子
10 バイ・バイ・ベイビー/郷ひろみ
注目めまい/小椋佳
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【およげ!たいやきくん/子門真人】

 いつものつもりで受けたバイトの話。ただ、バイト代に1万円の“色をつけてもらった”のがいつもと違っていた。

 フジテレビの子供向け教育番組「ひらけ!ポンキッキ」の中で流れた「およげ!たいやきくん」は日本の音楽業界、空前絶後のシングル盤売り上げ枚数455万枚を記録。オリコンチャートで76年の年明けから11週連続で1位を独走。1週間で50万枚も売れた週もあり、生産が追いつかなかったほどだった。

 「まいにち まいにち ぼくらは鉄板の…」で始まる歌詞を独特の歌唱法で歌ったのが子門真人。さぞや印税ががっぽり懐に入ったと思いきや、彼の収入はレコード販売に関してはわずか5万円のみ。アルバイトとしてレコーディングに参加、この曲を歌った。その際、1枚レコードが売れるたび数円の現金が配当される印税契約を交わしていなかった。「子どもの歌。売れてもたかがしれている」。安易にそう考えた子門だった。

 ところが…である。子どもはもとより、歌詞の内容が働くお父さんたちの気持ちを代弁しているかのようにも聞こえ、それが共感を呼び、レコードを買わない中年男性まで手に取るようになったのが、スーパーヒットの要因だった。

 発売したポニーキャニオンは、会社始まって以来の大ヒットに本人はおろか会社がビックリ。笑いが止まらぬくらいにレコードが飛ぶように売れ、ついに新社屋は「たいやきくんビル」とまで陰では言われるほどに。子門はと言えば、テレビ出演のギャラや各賞の賞金などは手もとに残ったものの、レコードが売れても1銭も入れず。題材にされたたい焼きも面白いように売れるのを眺めているしかなかった。

 当時子門の本業は歌手ではなく、音楽出版会社の社員。「たいやきくん」にシンパシーを感じたサラリーマンと同じ立場だった。元々大学卒業後に、藤浩一の名前で歌手デビュー5曲のシングル盤を発表したが、鳴かず飛ばずで引退。会社員として再出発した。71年、半ば遊び半分でバイト代をもらって歌った、あの仮面ライダーの主題歌「レッツゴー!!ライダーキック」が大当たり。以後も「科学忍者隊 ガッチャマン」などの主題歌など50曲ほどの依頼を受け歌った。

 たいやきくんが店を飛び出して海に行ったように、子門も広告代理店を経て夢だったミュージカル制作に取り組んだが、うまくいったとはいえず、93年に人知れず音楽の世界から去った。敬虔なクリスチャンであり、子門の芸名は洗礼名からきているという。

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