365日 あの頃ヒット曲ランキング 1月

【1972年1月】出発の歌/上條恒彦と六文銭 アクシデントが生んだヒット曲で道開ける

[ 2012年1月1日 06:00 ]

★72年1月ランキング★
1 悪魔がにくい/平田隆夫とセルスターズ
2 愛する人はひとり/尾崎紀世彦
3 水色の恋/天地真理
4 出発(たびだち)の歌/上條恒彦と六文銭
5 別れの朝/ペドロ&カプリシャス
6 雨のエアポート/欧陽菲菲
7 雨の御堂筋/欧陽菲菲
8 お祭りの夜/小柳ルミ子
9 長崎慕情/渚ゆう子
10 誰も知らない/伊東ゆかり
注目終着駅/奥村チヨ
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【出発(たびだち)の歌/上條恒彦と六文銭】
 アコーステックギターのコード進行のユニークな曲である。

 ささやくように歌いながら、徐々に盛り上がりをみせ、サビの部分で「さあーいま、銀河の向こうに飛んで行け」と歌い上げると、一気に壮大な世界が広がる。銀河から宇宙へ、そして未来へと…。学生運動が終息し、若者たちが何か絶望感にひしがれている時に、上條恒彦と六文銭が歌ったこの曲は71年11月に発売されると、年をまたいで支持され、レコード売り上げ38万枚を記録。歌手歴13年目の上條にとって初のヒット曲となった。

 アクシデントが生んだヒット曲だった。「出発の歌」は71年の「第2回世界歌謡祭」のグランプリ受賞曲だが、その出場歌手を決める「合歓ポピュラー・フェスティバル」が行われた。上條も出場していたが、小室等が率いるフォークグループ「六文銭」も顔を見せていた。作曲をする小室は上條と六文銭それぞれに曲を作ることになっていたが、期日までに1曲しか出来上がらず、苦肉の策として上條と六文銭が急きょ合体。上條がリードボーカルを務め、六文銭がバックコーラス役となる“新ユニット”を結成し、フェスティバルに参加。見事グランプリを獲得し、世界音楽祭への代表となると、そこでも最優秀賞を獲得。レコード化へと話が進んだ。

 自分の歌が歌えず、さらに家族が交通事故に遭うなど、上條にとってあまり縁起の良くない曲のような気がしたが、この大ヒットで72年1月から始まったテレビ時代劇「木枯らし紋次郎」の主題歌「どこかで誰かが」を歌うことも決定。これも30万枚以上のレコードをセールスした。

 舞台俳優を目指し、長野から上京。専門学校の学費を稼ぐため、サンドウィッチマン、コンクリートミキサー車の運転手など職を転々としたが、歌声喫茶に飛び入り出演したところ、その声が注目され、歌の道へ。NHKの音楽番組のレギュラーなど、少しずつチャンスをつかむと、「出発の歌」でブレーク。後に最初に志していた俳優への道を切り開いた。

 2012年のスタートの日。新たな思いと大きな夢に向かって、まさに出発(たびだち)の時である。

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