頑張れ!インディーズ File70
今回は問題作。絶望している人にだけ聞いてほしい
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humanlostのオサム(左)とマコ
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今年で結成10周年を迎えたhumanlost(ヒューマンロスト)。約4年の間、メジャーアーティストとして活動した経歴を持つ。長渕剛の名曲「乾杯」をカバーしてトリビュートアルバムに参加、さらに伝説の7万5000人の桜島ライブで長渕らと「しあわせになろうよ」を歌うなど実力、実績ともに文句のつけようがないバンドだ。
彼らが8月20日に発売する最新ミニアルバム「bookII」。メジャーへ再び殴り込みをかける作品になるのかと思いきや、オサムは「今回は問題作です」という。
どういう点が「問題作」なのか?前回のアルバムとどう違うのか?疑問は尽きなかったが、オサムの説明は明快だった。
「すごい暗い。全然キラキラしていない。絶望している人にだけ理解されるようにしよう、と。だから今回のキャッチは“絶望に効く”」
収録された5曲を聴くと納得する。今までの「パワーポップというかわかりやすい方向性」(マコ)だった曲とはベクトルが逆。ヒューマンロストの本性が剥き出しになった作品のようだ。
華やかな舞台を経験してウチらのネクラな部分を忘れていた
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humanlostのマコ
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確かに彼らにとって今回は問題作なのだ。ダイレクトに伝わるのが1曲目の「呻吟〜singin’〜」。レコーディングは一本撮りで「その時のテンションをぶつけた。だからわりとシンプル。凶器感をストレートに伝えたかったから」(オサム)。
「呻吟」の凶器感をより鋭利にするシャウトを担当したマコは“問題作”を作った理由を明かした。
「この10年でできなかったことを今回はやった。メジャーに行ったこともあったけど、自由度がやっぱり減ってしまった。周囲から“もうちょっとキャッチーにしてくれ”って言われたり。メジャーにいたときでも自分たちに嘘をついていたわけじゃない。でも、もしかしたら今回のようなアルバムをずっと作りたかったかもしれない。メジャーに行った数年間や、長渕剛さんのトリビュートアルバムに参加させてもらったことで、いろいろ華やかな舞台を経験できた。けど逆に言えば、ウチらの根本にあるネクラな部分を忘れちゃってたのかな」
オサムは「今回の作品なんてインディーズじゃなきゃ絶対作れないCDだと思うんですよ。これが重要」と言葉を続けた。
もちろん“らしさ”も残している。例えば、「呻吟」のサビは「君がいない世界で僕は独り生きてる」という歌詞。10度同じフレーズが曲で繰り返される。ギターのコードもベースのラインも全曲が多くて5つ程度で構成している。「わかりやすい歌詞」「わかりやすい曲」を作る。曲作りにおけるポリシーは貫いている。
「ヒューマンロスト」は逆説的に前向き
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humanlostのオサム
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ヒューマンロストの音楽に大きな影響を与えているのは青森が誇る文豪・太宰治だ。バンド名の由来となっているのは代表作「人間失格」。作品からも言葉の印象からも絶望的なイメージを連想させる。活動初期は、マイナス要素が大きかったのではないか。
バンドの名付け親オサムはこの質問について首を横に振る。短編集を手にとってから太宰文学にホレこみ、小説「津軽」のとおりに青森県を旅するほどの太宰フリークだ。
「逆に前向きなんですよ、『人間失格』っていうのは。ゼロから始まるから。これ以上落ちることはない」
「失格」からスタートしているのだから、もうあとはない。這い上がるだけ。落ち込むのではなくハングリー精神をむき出しにして前向きに進んでいこう。逆説的に彼らは前向きなバンドなのだ。
03年12月に発売したファーストアルバム「the end of my life」。記念すべき作品に「人生の終わり」というタイトルをつけたのも「終わることから始まる。つまり終わらない」(オサム)ということだった。
僕らはヒューマンロストを“文化”にしたい
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humanlostのマコ(左)とオサム
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10年目で転機となる作品を送り出すヒューマンロストが結成当初から目指すもの。それはこのバンドを“文化”にするということ。イメージは近代アートの巨匠、アンディ・ウォーホールの築いた芸術家が集うスタジオ「ファクトリー」のようなものだとか。
いろんなジャンルのアーティストを集めて、個々のやりたいことを発揮できる場を提供する。「カメラマン、ダンサー、女優、小説家…素人でもいいからそれを目指しているどんな種類のアーティストでも集まれる“場所”になりたい。そう思って私たちはバンドを結成したんです。その思いは10年経つ現在も変わっていません」(マコ)
彼らの考えに賛同するミュージシャンは多い。元Charcoal Filterの小名川高弘、元ヒステリックブルーのたくや、cuneの生熊耕治など親交の深いアーティストが“ノーギャラ”でアルバムなどに参加し、活動をサポートしている。
「僕らはこのバンドを“文化”にしたい。僕らがいずれ死んでも、また誰かがヒューマンロストを続けていく。1000年続くんです」(オサム)。
「10年前の元メンバーがひょっこり現れて、現在も楽曲に参加する場合もある」と笑う2人。だから輪が広がることはあって狭まることはないという。芸術家が集う“場所”を着実に築いている。
ヒューマンロストはわれわれの想像に及ばない遠い将来も人を変え、形を変え、それでもなお芸術家集団「ヒューマンロスト」という“文化”を育みながら、人間の感情に突き刺さる芸術を世に送り出しているはずだ。
写真
| アーティストProfile |
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名前 | humanlost(ヒューマンロスト) |
| メンバー構成 | osamu…ボーカル、ギター、ハープ mako… ボーカル、ベース、タンバリン 北川亮一…ドラム、コーラス | |
| 公式サイト | humanlostオフィシャルサイト | |
| PR | ロックなスリーピースバンド、それがヒューマンロスト。1998年夏に結成。この「ヒューマンロスト(人間失格)」という名前はリスペクトする太宰治の作品名から名付られた。彼らのサウンドの最大の特徴は伸びやかに歌うオサムと、スイートな魅力を持つマコの声の、絶妙なバランスのツインヴォーカルスタイルにある。幾度かのメンバーチェンジを経て渋谷ラママを中心に積極的なライブ活動を続けながら、自主制作CDを1000枚売り切った実績も持っている。バンドのポリシーは「芸術は、誰にでも分かるものでなくてはならない」というもの。ロックを大衆の為の芸術と捉え、ヒューマンロストは進化し続けている。 | |
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