二宮愛 昭和の名曲「時代」をカバー 「2021年を生きる私たちへのメッセージ」

[ 2021年9月9日 10:00 ]

YouTubeチャンネル登録者10万人達成で贈られた「銀の楯」を手に笑顔を見せる二宮愛
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 【牧 元一の孤人焦点】シンガー・ソングライターの二宮愛(31)が自身のYouTubeチャンネルで、中島みゆき(69)の「時代」をカバーした。

 この曲が世に出たのは、1975年。当時と現在では社会情勢が異なるが、♪今はこんなに悲しくて…で始まる歌詞が、コロナ禍で重苦しい日々を過ごす人々を励ますように聞こえる。

 二宮は「カバーするのは、今しかないと思いました。大人も子供もお年寄りもみんなコロナ禍の収束を願っているけれど、なかなか出口が見えて来ない。もしかしたら、ずっと、このままなのかも…。いや、そんなことはない…。いつか、この状況を『あんな時もあったね』と思い出して笑えるような日が来ればいい、という希望を胸に歌いたいと思いました」と話す。

 昨年6月にYouTubeチャンネルを開設。これまで古今東西の130曲以上をカバーし、現在、登録者は約13万5000人に及んでいる。中島みゆきの楽曲も「銀の龍の背に乗って」「ファイト!」「糸」などを歌ってきたが、昭和の名曲「時代」は自身がこの世に生を受ける前の作品だ。

 「中島みゆきさんが書く歌詞が好きで、リスペクトしています。オンタイムの世代ではないので、『時代』になじみがあるかと言えば、正直、ないんですよ。でも、以前から、みゆきさんは世界の状況、日本の状況を見て感じたことをストレートに言葉にしているんじゃないかと感じていました。1975年の頃は、今よりも良い時代だったかもしれないけれど、どこかで泣いている人はいたでしょう。そういう人の気持ちを歌ったんじゃないかと思っていました」

 この曲を実際に歌うのは今回が初めて。果たして、どのように歌えば良いのか…。模索から始めた。

 「みゆきさんの曲は特に練習するのが難しい。声が特徴的で、個性的な歌唱法だからこそ、その曲が良く聞こえる。私はどちらかと言うと、ストレートに歌って、あまり癖がある方じゃない。練習の段階で、果たして、みゆきさんの力強い歌い方に寄せるべきなのかどうか、ちょっと悩みました。でも、今回に限らず、その曲を知らない人にも、その曲そのものの良さを分かってもらえるように歌おうという思いは一貫しています。みゆきさんが歌っているメロディーを良く聴いて、それをそのまま歌おうと思いました」

 そして、歌唱した動画。メロディーを忠実に歌いながらも、個性を光らせている。歌に透明感があり、力感がある。随所に、まっすぐな心がうかがえる。曲の魅力を際立たせる見事なカバーだ。

 「このチャンネルでは、最初から最後まで通して歌って、失敗したら、最初から歌い直すというやり方をしています。『時代』は何回も歌わなくちゃいけないと思っていたんですけど、結果的に1回で終えました。正直、技術的には、もう少しうまく歌えると思うんです。でも、あえて1回でやめました。みゆきさんが書く曲はバラード、優しい歌のように聞こえて実はロックだと思うんです。歌詞を書く人間として考えると、普通は困難や悲しみ、ネガティブな表現をそのまま書かない。でも、みゆきさんは何も隠さずに実直に言葉にしている。そこがロックだと思うんです。技巧に走れば、ロックじゃなくなってしまうと思いました」

 このカバーで、特に、胸に響くのが、サビの歌唱だ。♪今日は倒れた旅人たちも 生まれ変わって歩き出すよ…という歌詞を3回歌うが、3回とも色合いが違って聞こえる。3回目を聴き終えると、以前より少し前向きな心持ちになる。

 「歌う言葉は同じだけれど、伝える相手を3回とも別に考えて、最後は、魂に向けて歌いました。みゆきさんが書いた曲を歌わせていただいただけなので、偉そうなことは言えないけれど、『時代』には、2021年を生きる私たちに対しても、とても深いメッセージがこめられていると思います。『これは私に向けられた言葉なんだ』と思いながら聴いてもらえれば幸せです」
 
 ◇二宮 愛(にのみや・あい) 1990年(平2)2月2日生まれ、神奈川県出身の31歳。2012年、ボーカルを務める「matthews」が初アルバム「Girls Like Dream」を発売。14年、TBS「UTAGE!」に出演し、その歌唱力が話題に。15年、初のカバーアルバム「From The Kitchen Corner」を発売。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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