残暑の京都も涼やかに!蔵の中で開催された怪談朗読劇

[ 2021年9月1日 15:15 ]

蔵の中での朗読劇。赤い遮幕の中で語るまつむら眞弓と琵琶で伴奏した川合絃生氏
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】残暑厳しい京都で、東映京都撮影所に所属する女優のまつむら眞弓が怪談朗読劇でつかの間の涼をもたらした。8月28日の午後5時と同7時からの2回公演。新型コロナウイルス感染症が収まらない中、厚労省の提言する感染症対策の基本方針をしっかりと守った上で、それぞれ約20人の客を入れて開催した。

 不動産流通業レ・コネクション(京都市下京区)が手掛ける京町家一棟貸しの宿「紡 四条新町」に併設する築80年の蔵が舞台。おどろおどろしい雰囲気に包まれる中での熱演となった。

 まつむらは1980年にテレビ時代劇「暴れん坊将軍」でデビュー。近年は映画「花戦さ」(2017年)や、吉永小百合主演の映画「北の桜守」(18年)、「最高の人生の見つけ方」(19年)、ドラマ「科捜研の女」「遺留捜査」などに出演。10年ほど前から「創作怪談朗読劇」をライフワークとして精力的に上演し、19年には念願の米国公演も実現させた。

 「諸国もののけかたり其の一 椿小路の比丘尼(びくに)さま」という創作劇。比丘尼とは人魚の肉などを食べて不老長寿を得た伝説上の人物。福井県小浜市には、800歳の時、若狭の殿様が病気になり、残りを殿様に譲って生涯を終えた八百比丘尼の話が伝わり、市内の神社に祀(まつ)られている。

 椿小路の比丘尼が開いた語りの会。小泉八雲の妻、セツ夫人がそこで聞いた“耳なし法師”の話を夫に伝え、それをもとに八雲が「耳なし芳一」を作ったという創作劇だ。

 まつむらは「嵐電(京福電鉄)の中で初めて開いた朗読劇の出し物が“耳なし芳一”でした。八雲の怪談は原点といってもいい題材」と話し、蔵を舞台にした公演については「おもしろかったです。ソーシャルディスタンスを取り、赤い遮幕を下ろした中で朗読しましたが、それがまた不気味さを増して良かったと思います」と強調した。

 人気・実力を兼ね備えた当代きっての落語家、柳家喬太郎(57)も八雲の怪談をベースに「梅津忠兵衛」「雉子政談」などの新作噺(ばなし)を創作し、CDに収録している。やはり八雲作品は日本の夏に欠かせないものなのだろう。

 いつもは三味線で伴奏を務める川合絃生氏が今回は琵琶の音色で朗読を彩った。コロナ下で思うような開催は難しいが、そんな中でも地道に、まつむらのチャレンジは続く。

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