渡辺王将 貫禄の開幕戦6連勝、長考応酬制す「ここから調子上げたい」

[ 2021年1月12日 05:30 ]

スポニチ主催第70期王将戦7番勝負第1局第2日 ( 2021年1月11日    静岡県掛川市・掛川城二の丸茶室 )

<第70期王将戦第1局第2日>忍者に扮し子供忍者と笑顔を見せる渡辺王将(撮影・西尾 大助)
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 渡辺明王将(36)=名人、棋王との3冠=が初挑戦の永瀬拓矢王座(28)を125手で下し、3連覇へ好スタートだ。ハイペースで進んだ第1日とは打って変わり、午前中はわずか3手のスローペース。渡辺は午後から永瀬王をじわじわと攻撃して優位を広げ、そのまま逃げ切った。

 貫禄の2文字はこの人のためにある。「(終盤は)寄せにいって自分の王が詰まなければ勝ちだろうと思ってはいました」。開幕勝利を飾った渡辺は一言一言を明快に発しながら一局を簡潔に取りまとめた。

 異例の77手に達した第1日。転じてこの日はトッププロ同士の対決にふさわしい長考の応酬だ。封じ手の▲5五歩は「いろいろあり、いくらでも考えたいところだがそういうわけにもいかない。成算がそんなにあったわけではなかったんです」と心境を吐露する。

 しかし、この心の迷いは対する永瀬をも迷わせていた。△同銀直の応手に63分を消費させる。自らも昼食休憩明けの81手目▲6八同飛(第1図)に77分もの時を投じたが、この時点ですでに流れは渡辺に傾きつつあった。

 「明快さに欠ける局面がずっと続いていた。なかなか決め手がつかめない展開でした」

 勝利を意識したのは107手目▲5三同飛成と大駒を切り、さらに109手目▲5四銀と永瀬王に迫った時点。「でも駒をたくさん渡していたので頓死は気にしていましたが…」。単純な見落としがないかを丁寧に確認しながら、着実に勝利をたぐり寄せた。

 「ミスター開幕戦」と呼んでいいだろう。過去5度の王将戦登場で、第1戦はことごとく制している。初登場の第62期(13年)で佐藤康光王将を退けて以来、昨年の第69期(対広瀬章人八段)まで5連勝。そしてこの日の快勝劇。会場は全て掛川だ。「3つ、4つと勝っていくと得意なのではと思うので、それがいい結果になっているのでは」と、はにかみながら分析する。ミスター開幕戦はミスター掛川でもある。

 順位戦を免除されている影響で、昨年11、12月の2カ月間はわずか2局だけ。今王将戦は12月11日の竜王戦ランキング戦以来、1カ月ぶりの真剣勝負に不安を抱いていたが「久しぶりの対局だったがそれなりに指せた。またここから調子を上げていきたい」とポジティブムードは全開だ。たかが1勝、されど大きな1勝。自身初の3連覇が視野に入る。

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