大河「麒麟がくる」 染谷将太「信長の気持ちは、より帰蝶に向かっていく」

[ 2020年5月26日 11:00 ]

NHK大河ドラマ「麒麟がくる」で織田信長を演じる染谷将太(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の織田信長(染谷将太)がますます面白くなってきた。17日の放送で弟の信勝(木村了)を殺害したが、24日の放送では母の土田御前(檀れい)に激しく責められ、ぼうぜん自失となった。

 土田御前が「そなたは弟を殺しただけではない。この母も殺したのです」と号泣すると信長は絶句して涙。その後、魂が抜けた人のような足取りで廊下を歩いていたが、正室の帰蝶(川口春奈)が歩み寄ると、弱々しくそこに座り込んでしまった。そして、虚無的な表情で「終わった」とひと言。「わしは、父も、弟も、母も失った」と絶望感をあらわにした。

 信長を演じる染谷がこの場面についてコメントを寄せた。
 「信長のネクストステージに進むための大事なシーンだと思って演じました。空っぽな感情で始まり、帰蝶が視界に入り、力が抜けます。頭が回らない中、言葉だけが出て来る。悲しみと虚無感を大切に演じました」

 染谷は場面の意味合いをこう述べた。

 「本当は甘えたかった、本当はすがりたかった、そんな自分の家族を全て、自分の手で消してしまいました。自ら、自分をより深い孤独へと追い込んだのです。承認欲求の根本となっている存在がなくなってしまったのです。信長はもう失うものがないと思いました。しかし、そんな信長に帰蝶は寄り添っています。より信長の気持ちは帰蝶に向かっていくと感じました。この虚無感から彼を引っ張り出していくのは次なる戦、桶狭間の戦いです」

 24日の放送では、もうひとつ興味深い場面があった。斎藤道三の長男・義龍(伊藤英明)が信長暗殺を計画。そのうわさを聞いた明智光秀(長谷川博己)が大名・松永久秀(吉田鋼太郎)に頼んで計画を阻んだ。光秀はのちに本能寺で信長を暗殺するが、ここで義龍の計画を放置すれば歴史が大きく変わったことになる。

 制作統括の落合将チーフ・プロデューサーは「義龍が、信長を暗殺しようとする話は、いくつかの文献に残されている(その文献の信ぴょう性は別として)。信長が1568年の上洛(じょうらく)以前にも上洛していたことも同様。そこに光秀がいて、暗殺を押しとどめる話は、脚本家チームの創作」と明かした。

 この創作について落合氏は「このドラマでは光秀と義龍がかつて親友だったという設定。さらに義龍の妹・帰蝶の夫が信長で、その信長とも親交のある光秀が起こす行動としては自然なものだと思われる」と説明。その上で「この回の主題は、光秀とかつての親友の別れであり、違う道を歩み始めた二人の生きざまの違いを描きだすこと。脚本家チームは、史実をつかって、信長暗殺事件に光秀をからませることで、義龍と光秀の最後の二人だけのシーンを紡ぎだした」と話した。

 そして、いよいよ物語は信長の大きな転機となる桶狭間の戦いへと進んでいく。

 ◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。

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