広瀬八段 1勝1敗に“攻めの渡辺王将”のお株奪う猛攻 王将戦第2局

[ 2020年1月27日 05:30 ]

第69期大阪王将杯王将戦 7番勝負第2局第2日 ( 2020年1月26日    大阪府高槻市・山水館 )

高槻の名産である寒天作りの衣装を身にまとい喜ぶ広瀬八段(撮影・奥 調)
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 挑戦者の広瀬章人八段(33)が26日の第2局で、王将戦7番勝負初勝利を挙げた。連覇を狙う渡辺明王将(35)=棋王・棋聖との3冠=の封じ手以降、攻勢を拡大。117手で押し切り、対戦成績を1勝1敗の五分に戻した。昨年12月の竜王失冠、年明けから5連敗の流れを変える33歳初白星。第3局は、2月8、9日に栃木県大田原市のホテル花月で指される。

 封じ手△6三銀から攻勢に出た。渡辺桂を食いちぎり、金取りに角を打たれても放置する。そして▲5四歩(第1図)。金銀両取りを捨て置いて相手強打を眼前で外し、カウンターを放つような踏み込みだった。

 1日目の59手目▲1五歩に広瀬自身「自己最長かも」とする2時間42分。ところが2日目昼食休憩前には残り時間が広瀬2時間38分、渡辺2時間42分と接近し形勢も逆転した。

 昼食休憩時、広瀬は「苦労する終盤戦。攻めが細いので切れないようにしたい」となお慎重だったが、終局後は「(77手目▲1一角成と)馬をつくって(79手目で)香を3四に打って、簡単には切れない」と分析。攻め将棋の渡辺を攻めまくる、最短距離の寄せで投了へ追い込んだ。

 対局場検分があった24日、広瀬は開催地へ贈る恒例の揮毫(きごう)を「新」とした。昨年12月、豊島将之名人(29)に1勝4敗で竜王を奪われ、年明けからは公式戦5連敗。「32歳の一年はいろんなことがあった。33歳は心機一転で臨みたい」。今月18日に誕生日を迎え、漢字一文字に示した決意を早速実らせた。「明るい材料にしたい。改めて5番勝負になったので、3局目以降も頑張りたい」と前を向いた。

 羽生善治九段(49)ら羽生世代の棋士を倒して通算タイトル23期の渡辺は、年下とのタイトル戦でも6戦全勝。広瀬自身、昨年の棋王戦5番勝負は1勝3敗で屈した。棋界の勢力図は3冠の渡辺、豊島の2トップに永瀬拓矢2冠(27)が続く。同世代の広瀬がタイトルホルダー復帰への第一歩をしるした。

 ▼広瀬章人八段 ▲6二銀と打った局面が、自分の中では少し勝っているという読みだったので決断した。凄く難しい受けの手がなければ、と思っていた。

 ▼渡辺明王将 封じ手の次のところで一晩迷って、結果的にまずい方を選んでしまったのが残念。

 《高槻市歓迎ムード》2年連続の王将戦の舞台となった高槻市。アマ初段の腕前を持つ浜田剛史市長が取材本部を訪れ「地方自治体には将棋文化を守る責務がある。タイトル戦開催は一つの方法」と力説した。市営バスの行き先案内板に「☆歓迎☆王将戦」と表示されるなど、ウエルカムムード一色だった。

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