渡辺棋王先勝 昨年11月から12連勝、8筋叩き合い制した

[ 2019年1月15日 05:30 ]

第68期王将戦7番勝負第1局第2日 ( 2019年1月14日    静岡県掛川市・掛川城二の丸茶屋 )

第1局を制した渡辺棋王は二宮金次郎像の前で本を手にする(撮影・村上 大輔)
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 5期ぶり復位を狙う挑戦者の渡辺明棋王(34)が、3連覇を目指す久保利明王将(43)に115手で先勝した。終局は午後6時19分。自らの封じ手を開戦の合図に、互いの王の頭上で勃発した壮絶な叩き合いを先手の渡辺が制した。久保は持ち時間8時間を使い切って粘りを見せたものの一歩及ばなかった。第2局は26、27日に大阪府高槻市の山水館で指される。

 戦い慣れた久々の2日制の舞台で、強さを発揮した渡辺は「時間の使い方は意識しなかった。難しいところで考えたらスローペースになった」と自然体を強調した。持ち時間を使い切り、逆転の筋を探した久保は「分からない局面が多く、最後ちょっと足りなかったかなという将棋」と悔しさをにじませた。

 無風だった初日から一転、渡辺の封じ手は戦いの火ぶたを切る[先]4五歩だった。「開戦の頃合いかなと思っていた」と渡辺。この手を本命視していたという久保も[後]同歩と応じ、以降両者ノータイムの応酬が続く。「開戦は歩の突き捨てから」の格言通り渡辺は3、8筋の歩を次々に取らせ、手持ちの角を6六に打ち据える。狙われた飛車も早々に切り、攻勢を強めた。

 そこからは互いの王が鎮座する8筋で、怒とうの叩き合いが始まる。「叩きの歩」は、狙う駒の前に犠牲の歩を打ってつり上げる手筋。まず久保が[後]8七歩と陣形を乱し、つり上げた金をさらに[後]8六歩と叩いた。そして渡辺の83手目[先]8三歩が、痛烈な叩き返し。敵将をおびき寄せてから[先]6六角と悠々と引き上げ、8四の地点は守り切れない形になった。

 昨年度の渡辺は竜王失冠や順位戦A級陥落など苦難が続き、プロ入り後初めて負け越しを経験した。プロ間ではソフト研究の影響もあり、王の囲いより攻守両面でバランス重視の戦法が主流に。守りを固めじっくり攻める棋風で結果を出してきた渡辺は「作戦面で少し迷いがあった」と振り返る。

 雌伏の時期にも地道な研究を続け、迷いが消えた。順位戦B級1組を開幕10連勝でA級復帰、トップ棋士で争うJT杯を制し、王将戦挑戦者決定リーグで完全復活した。昨年11月からの連勝を12に伸ばし、掛川対局では4戦4勝と不敗神話も継続。「まだ始まったばかり。次までに作戦を練ってまた頑張りたい」と気を引き締めた。

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