藤井六段 中学生ラスト対局黒星も「思った以上の活躍できた」

[ 2018年3月29日 05:30 ]

王将戦1次予選で井上九段に敗れ、対局を振り返る藤井六段
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 将棋の最年少棋士、藤井聡太六段(15)が28日、大阪市内の関西将棋会館で行われた王将戦1次予選6組準々決勝で、井上慶太九段(54)に137手で敗れた。1年半にわたる中学生棋士としての最後の対局で、通算成績は71勝12敗。歴代最多29連勝や一般棋戦優勝などスーパー中学生として輝かしい成績を残したが、最後は敗戦で連勝は16で止まった。

 午後6時の終局直前。藤井は暗くなり始めた外を見つめたり、天井をしばらく見上げたりした後で、盤上を見下ろしてから深く頭を下げた。

 先手の井上が仕掛けてきたおはこの矢倉戦に「ちょっと感覚がつかめなかった」と珍しく戸惑った。最後は1分将棋に追い込まれ、29連勝以降最多となっていた連勝も16でストップ。「それは仕方のないこと。まずは内容を反省したい」と前を向き、敗戦を高校生棋士となる4月以降の糧にすることを誓った。

 将棋ファンの域を超え、日本中の注目を浴びるまでに成長した中学生天才棋士。16年10月にプロになってからの1年半を「自分が思った以上の活躍ができた」と振り返った。

 同12月の加藤一二三・九段(78)との初対局で勝利を収めるとそのまま連勝を続け新記録を樹立。以降も“史上初”“中学生初”などを連発した。

 今年度は73対局で61勝12敗、勝率・836に29連勝(16〜17年度)もマーク。歴代最多の連勝に、勝率(1位は中原誠16世名人の・855)、勝利数(1位は羽生善治竜王の68勝)とも4位タイと対局数を除く3部門で、ベスト10内に入る抜群の成績を残した。

 そんな実績に通信簿を付けるなら何点?という質問には「これまでの結果に対する評価はまだ早い」と落ち着いて答えた。視線の先にあるのは、やはり未到のタイトルへの挑戦か。それが実現すれば、屋敷伸之九段(46)が持つ最年少でのタイトル奪取(18歳6カ月)記録更新への期待も膨らむ。

 中学の修了(卒業)式は終えたが、今月末までは中学生の身分。4月から高校生棋士に“昇級”するのと同時に新年度は順位戦でもC級1組に昇級。あと2勝で七段昇段が決まる竜王戦ランキング戦も注目を集める。

 これからは高校生と棋士という二足のわらじ生活が始まる。その間にどれだけ成長し、金字塔を打ち立てるのか。

 【中学生棋士としての藤井六段の主な快挙】

 ▼最年少プロ入り 16年10月1日、14歳2カ月でプロ棋士に。加藤一二三・九段の14歳7カ月を上回る史上最年少。12月のデビュー戦でその加藤に勝利。

 ▼最多連勝 17年6月、デビューから無傷で公式戦29連勝を達成。神谷広志八段の28連勝の記録を30年ぶりに塗り替える。

 ▼羽生に2勝 17年2月、羽生善治竜王(当時3冠)に非公式戦で勝利。公式戦でも今年2月の朝日杯オープン戦準決勝で勝つ。

 ▼名人撃破 今年1月の朝日杯オープン戦で佐藤天彦名人を破り、中学生で初めて公式戦で名人に勝利。

 ▼スピード昇段 順位戦C級2組で開幕9連勝し同1組昇級を決め、2月1日付で中学生初の五段昇段。同月17日の朝日杯オープン戦決勝で広瀬章人八段を破り、ともに中学生初の一般棋戦優勝と六段昇段を果たす。

 ▼記録4冠 今年度の記録4部門(対局数、勝数、勝率、連勝)を史上最年少で独占。

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