藤井六段と初の師弟戦 杉本七段に兄弟子・小林九段がエール

[ 2018年3月3日 05:30 ]

第68期王将戦1次予選2回戦で激突する藤井六段(右)と師匠の杉本七段(写真は昨年6月、藤井が28連勝を達成した時のもの)
Photo By スポニチ

 来年の王将戦7番勝負の挑戦者を決める第68期1次予選2回戦で8日、藤井聡太六段(15)と杉本昌隆七段(49)による初の師弟戦が関西将棋会館で実現する。2人が所属する板谷一門の兄弟子で、4度王将戦挑戦者決定リーグ入りした小林健二九段(60)は「俺に負けるようなら甘いぞ、と見せてほしい」と杉本を激励した。

 杉本は故板谷進九段の弟子だが、プロ目前で師匠が急死したため四段昇段するまでの2年8カ月、兄弟子の小林が「預かり弟子」として身元保証人になった。つまり藤井にとって小林は師匠の師匠、「大師匠」ともいえる。

 小林によると、板谷一門の悲願、それが「東海地区にタイトルを」。東京と大阪にしか会館がない将棋界。故板谷九段は70〜80年代の全盛期、最新棋譜が入手不能な情報格差の中、普及のため名古屋に拠点を置き続けた。47歳で他界した当時、大阪で暮らしていた小林は後を継ぐことを考え、名古屋での物件を探した。だが、家族のことなどを考慮し、決断できなかった。

 一方、杉本は四段昇段後、大阪から出身地の名古屋へ戻った。その愛弟子である藤井は今春、名大教育学部付属高への進学を決めた。愛知県での生活を続けることを選択したのは、板谷大師匠の遺志を継ぐかのようだ。

 2月の朝日杯オープン。準決勝で羽生善治竜王、決勝で広瀬章人八段を連破し、中学生で初めて一般棋戦を制した。小林は「漫画のような世界、ありえない」と振り返る。自身も昨年8、9月に藤井と対戦し2戦2敗。対局中「顎が外れそうになった」と驚いたのが、その落ち着きだった。「長年トップで活躍した人の雰囲気。オーラに圧倒された」と40年以上のプロ生活を顧みて語る。

 「師弟戦はお互い棋士冥利(みょうり)でしょう。将棋界では、弟子が師匠に公式戦で勝つことを“恩返し”と言う。師匠にとってはたまったものじゃありませんが」

 杉本と藤井はこれまで練習将棋で約100局指し、杉本の勝率は2割ほどとか。師匠が威厳を示すことは厳しいかもしれない。

 ただ、小林は杉本に伝えたという。「藤井六段とどんどん対局できるように活躍して。あっという間に追い付かれたら困る。早く八段になって」。昇段条件の七段昇段後190勝まであと13勝。最大の支援者であるため、壁にもなるべきだ。そんなメッセージに聞こえた。

 ◆小林 健二(こばやし・けんじ)1957年(昭32)3月31日、高松市出身の60歳。72年、6級で故板谷九段に入門。75年四段。02年九段。名人挑戦権を争うA級順位戦は4期在籍。

続きを表示

2018年3月3日のニュース