「バイプレイヤーズ」田口トモロヲは“下ネタ癒し系”松居監督と1対1の第3話「弱るほど生命力」

[ 2018年2月21日 10:00 ]

田口トモロヲ×松居大悟監督対談

テレビ東京「バイプレイヤーズ〜もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら〜」のメンバー・田口トモロヲ(左)と松居大悟監督が対談(C)「バイプレイヤーズ2018」製作委員
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 俳優の田口トモロヲ(60)は、名脇役たちが再び本人役で共演するテレビ東京の連続ドラマ「バイプレイヤーズ〜もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら〜」(水曜後9・54、全5話)のメンバー。“下ネタ癒し系”のキャラクターを見つけ、撮影現場のムードメーカーを担っている。前回のメーン演出を担当し、今回も5話中2話を手掛ける新鋭・松居大悟監督(32)は、とりわけ予想を裏切られる田口の演技を絶賛した。

 約1年ぶりの復活となり、深夜(金曜深夜0・12)の40分枠からプライム帯(午後7〜11時)の1時間枠に昇格。昨年1〜3月に放送された前作「〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」に続き、田口、遠藤憲一(56)大杉漣(66)松重豊(55)光石研(56)が出演。寺島進(54)はスケジュールが合わず、今作は休む。

 前回は、6人が共同生活を送る“おじさんだらけのテラスハウス”として話題に。今回は、テレ東制作の朝ドラ「しまっこさん」で共演することになった5人がロケ地を間違えて無人島に流れ着き、サバイバル生活を送るというストーリー。

 難を逃れたものの、ホテルの部屋不足のため廃墟を改良した“島ハウス”に住みながら「しまっこさん」の撮影に臨む5人。女バイプレイヤーたちが現れる第3話(21日放送)は田口がメーンの回(ナレーションも担当)だが、風邪をひき、1人、寝込むという設定。それには訳があった。

 ――田口さんが舞台「秘密の花園」(1月13日〜2月4日、東京芸術劇場)の稽古・本番のため、昨年12月から約2カ月不在。田口さん1人のシーンを先に、11月に撮影しました。

 【田口】皆さんのスケジュールがもう決まっていて、僕はたまたま舞台。台本を頂いたら、僕のところだけ独立していて、大風邪をひいて1人で寝込んでいる。そして他の皆さんの“わちゃわちゃ”したドラマが進むという内容で、よく考えてくれたなぁと思いましたね。僕のシーンだけ、寝込んでいるところだけ、丸1日撮り。(一人芝居の第一人者)イッセー尾形さんみたいな一人芝居の気持ちで挑みました(笑い)。

 【松居】普通に考えたら、トモロヲさんの舞台があって、絶対できないはずなのに、これをやってのける「バイプレイヤーズ」の制作陣は凄いと思いましたね。舞台が終わったらトモロヲさんすぐ合流できるように、逆算で撮りました。

 【田口】その構造を考えるのは、凄いですよね。だから、これから何があっても、怖くない(笑い)。どんなことがあっても、このチームだけはサバイブして「バイプレイヤーズ」を撮り続けるんだなって。本当に感心しました。

 【松居】僕も11月中旬まで舞台(※1)の地方公演があり、「バイプレイヤーズ」の打ち合わせにガッツリは参加できていませんでした。ちょうど舞台が終わって、3話の撮影に入ったので。「バイプレイヤーズ」、凄いなと思いましたね(笑い)。

 ――松居監督が「丸1日、トモロヲさんと撮影して思ったことは、トモロヲさんが自由すぎて、放送禁止用語をバンバン言っちゃうこと」と雑誌で発言されていました。

 【2人】ハッハッハッ。

 【松居】隙を見て、セリフを下ネタに変えてくる自由さですよね。「ここは、きっとトモロヲさんが何か下ネタを入れてくれるに違いない」と願っている自分がいます(笑い)。

 【田口】「バイプレイヤーズ」の皆さんは、だいたいシーン尻にアドリブを入れてくるんですよ。それで僕もアドリブを入れていたんですが、声が低いので、セリフが通らないんですよね。皆さんがワーッと言うから、その音圧に負けちゃって、なかなか入り込めませんでした。その時、1つの方向性としてシモを入れ込むということを思い付いたんです(笑い)。皆さん百戦錬磨ですから、あらゆる引き出しからアドリブが出ましたが、シモだけが空いていたんですよ。「そこだ!その席だ!」と思ったのが、最初の動機です。

 【松居】いやぁ、下ネタはうれしかったですね。

 【田口】基本的に下ネタって、罪がないじゃないですか。結局「またまた〜、そんなことを言って、放送できないじゃないですか」と突っ込まれて、チャンチャンとなって、現場がちょっとだけ和む。そういう役割です(笑い)。前作の中盤ぐらいからですかね。だんだん自分の席を見つけたんですが、その席は一切、放送されないっていう(笑い)。それでも、現場は男子たちは和んで、疲れが少しだけ緩和される。一応“下ネタ癒し系”と自負しています(笑い)。ただ、今回は深夜じゃなく、プライムタイムなので。

 【松居】結構、厳しいなと。ただ、3話の下ネタに関しては、今のところ、そのまま(ピー音を入れず)行けるんじゃないかと思っています。

 【田口】今回も下ネタは誰からもお願いはされていませんが、僕は勝手に心の中で期待されていると思っています。

 【松居】僕は待っていました。現場が和むのもありますが、それよりも単純におもしろいから、できるだけ使いたいですよね。

 ――お二人は前作の「バイプレイヤーズ」が初仕事。それまでは、どのような印象をお持ちでしたか?

 【田口】童貞マインド監督(笑い)。映画を見て、雑誌のインタビュー記事を読むと、童貞マインドを大切にして作品を作っているということが印象に残りました。

 【松居】僕の「アフロ田中」(2012年公開)のプロデューサーが、トモロヲさんが監督した映画「ピース オブ ケイク」(15年公開)のプロデューサーも務めていて。そういう共通点もありましたし、トモロヲさんが出演された作品もずっと拝見していたので、ご一緒できるのは凄くうれしかったですね。

 ――実際にお仕事をされてみて、いかがでしたか?

 【田口】「バイプレイヤーズ」の前作は物語性というところで、結構、縛りが多かったんです。そこに関して、俳優サイドが「もっと物語性を壊してもいいんじゃないか」と。制作サイドと、いい意味で“闘い”があった時、松居監督はきちっと対峙をしてくれて。若いですが、自分のやりたいことは押し通してやるし、俳優サイドに譲るところは譲る。そういうところで、うまくコラボできたと思います。クレバーですよね、今の若い人たちは。僕らの時代は、もう少し頑固だったり、表現方法がいかつかったりしましたが、今の人は非常に柔軟だなというのは感じます。

 【松居】前作だと、僕ら制作サイドが皆さんとやりたいことが多すぎて、台本に盛り込みすぎたんです。やってほしいことや言ってほしい言葉をはじめ、プラス、ドラマだからサスペンス要素も…と欲張って。このメンバーでいること自体に価値があって素敵なことで、皆さんがセッションすればするほど輝くのに、そこに目を向けられていなかったということが、現場に入って気付いて。台本を直していきました。

 【田口】結構、大変でしたよね。

 【松居】…大変でした。

 【田口】撮影が朝早くに始まって、夜遅くに終わって、その後に(制作サイドを)呼び出しですよね。ちょっとホロ酔いのおじさんたちが(笑い)。一番ご苦労されたのが浅野プロデューサー(※2)。浅野さんが本当に愛情を持って、僕らのことを支えてくれた。浅野さんの愛情がなかったら、第2弾に続かなかったと思いますし。そういう人と、その人が託した監督と、今回も一緒にできるというのは喜び。いい意味でモノ作りの闘いがあったから、今回もあるんだと思うんですよね。

 ――今回は田口さんとマンツーマンの撮影もされました。改めて田口さんの魅力を教えてください。

 【松居】全く想像がつかないところですね。それがトモロヲさんを「自由」と言ったことにつながるのかもしれません。前回もそうでしたが、「こういうシーンだから、こういう感じになるんじゃないか」とイメージするんですが、現場入ったら、すべてがリセットされる。特にトモロヲさんは。今回の3話だと、風邪をひいて、もっと弱っていると思っていたんですが、弱れば弱るほど、生命力が出てくるみたいな感じのお芝居だったので(笑い)、おもしろかったですね。

 ――最終回の第5話(3月7日放送)は松居監督が演出を担当。最終回への意気込みをお願いします。

 【松居】できるだけ、最終回らしくないものにしたいと思っています。「バイプレイヤーズ」って、ドラマであってドラマじゃなく、ドキュメントであってドキュメントじゃなく、らしくないものだから、いいんです。最終回の真ん中を一番盛り上げて、その後は結構ダラダラ行こうとか…。最後に盛り上がって終わったら、最終回ぽくて嫌。「まだ続くんだ」みたいな雰囲気を出したいし、また皆さんに会いたいと感じていただけるものにしたいと思います。

 【田口】もう、ノービジョンで行きたいですね(笑い)。一応ドラマという枠組みにはなっていますが、たぶん今まで見たことがないポテンシャルのある作品になっていると思うんです。「ドラマは、こうでなければいけない」ということじゃない、ある意味、実験。そこがおもしろいと理解してくれるプロデューサーと監督が揃ったので、全うしたいですね。このメンバーが揃ったからこそ、新しい形のものが生み出せるんじゃないかと、ささやかに期待しています。そして、僭越ながら力になれたらと希望しています。

 ◆松居 大悟(まつい・だいご)1985年11月2日、福岡県生まれ。、劇団ゴジゲン主宰。2009年、桜庭ななみが主演を務めた「ふたつのスピカ」でNHK最年少のドラマ脚本家デビュー。12年、松田翔太主演により人気漫画を映画化した「アフロ田中」で長編デビュー。映画「ワンダフルワールドエンド」(15年公開)はベルリン国際映画祭に出品され、映画「私たちのハァハァ」(15年公開)はゆうばり国際ファンタスティック映画祭2冠に輝いた。16年12月には蒼井優主演の映画「アズミ・ハルコは行方不明」が公開。枠にとらわれない作風は国内外から高く評価され、ミュージックビデオ制作、コラム連載など活動は多岐に渡る。最新作「アイスと雨音」(3月3日公開)は現実と虚構、映画と演劇の狭間で揺れ動く若者たちの1カ月を74分ワンカットで描いた。

 【※1】松居監督は劇団ゴジゲンを主宰。第14回公演「くれなずめ」は昨年10〜11月に行われた。

 【※2】ドリマックス・テレビジョンの浅野敦也プロデューサー。前作を企画。今作は企画とともに第1話、第2話の演出も自ら担当した。前作の際、松居監督の起用理由について「松居君はこの6人(遠藤憲一、大杉漣、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研=あいうえお順)と全く仕事をしたことがなかった。だから、新しい魅力を引き出してくれるんじゃないかと。もちろん、6人と仕事をしたことがあるベテランの方がチーフで付いた方が安心かもしれませんが、全くの未体験の『初めまして』から入るというのも、おもしろいんじゃないかと思いました。お互い、手の内が全く分からないところから、緊張関係で進められる。この6人は数え切れないほどの作品にご出演されているので、ある程度のものに関しては既視感があると思うんです。新しいチャレンジをしたい方々ばかりなので、松居監督とのタッグも1つのチャレンジになればいいと思いました」と説明した。

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