“相振り飛車シリーズ”に 豊島八段誘導、久保王将「私の土俵」

[ 2018年2月20日 05:30 ]

第67期王将戦7番勝負第4局第1日 ( 2018年2月19日    兵庫県尼崎市・都ホテルニューアルカイック )

<王将戦第4局第1日>引き締まった表情で初手を指す豊島八段
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 久保利明王将(42)に豊島将之八段(27)が挑む第4局が開幕した。久保の2勝1敗で迎え、注目の戦型はまたも相振り飛車。早くも3度目の“相振り飛車シリーズ”になった。久保が防衛へ王手の3勝目か、豊島が2勝2敗のタイか。20日の2日目は午前9時から対局が再開される。

 悲鳴に似たため息が、棋士らが集う控室に漏れたのは封じ手まで約1時間の夕暮れ時だった。豊島の51手目[先]3九金。「こんな囲い、ありました?」「見たことない」「摩訶(まか)不思議」。久保の端攻めへの備え、王の退路を築く狙いだが、解説の大石直嗣七段も「驚きました」。金銀3枚が王を守るのに、囲いの名称を誰も指摘できないのがその証。効力は2日目、判明する。

 将棋の戦法は居飛車と振り飛車に大別され、居飛車同士の相居飛車が多数派なら相振り飛車は少数派。久保の8手目[後]2二飛に13手目[先]8八飛(第1図)と応じた豊島。角銀が7段目に上がって飛車の横利きを通し、先手豊島では初、シリーズ3度目の相振り飛車が確定した。

 「一回やってみたかった。従来では珍しい形ですが、最近の感覚では苦にしなくなった」

 居飛車党ながら相振り飛車へ誘導した豊島は「(相居飛車を)イメージして指したところはあります」とも付け加える。囲いが左にあるか右かの違いで、将棋盤を縦に割れば攻守が向き合うのは同じ。

 一方、久保にも意地があった。「一手一手難しい将棋。経験値で言えば、生きてくると思う」。振り飛車一筋25年。「私の土俵です」と表現したこともある相振り飛車で、同じ関西の後輩に後れは取れない。

 4局中3局が相振り飛車という、前代未聞の7番勝負になった。「相振り飛車はセンスが大事とされます。“新しいシリーズ”という印象です」と大石。将棋の歴史を創造するその最前線に、2人はいる。

 【第67期王将戦VTR】

 ▼第1局 相振り飛車から後手番の豊島が早い段階で攻撃を開始。久保が慎重に受けたものの豊島の波状攻撃が続き、2日目の昼食後間もない午後1時57分に久保が投了。豊島が8時間の持ち時間を半分以上残して先勝した。

 ▼第2局 先手番の豊島が居飛車穴熊に構え、久保の四間飛車と対抗型に。久保が本来守り駒である美濃囲いの桂を、9筋から攻めに活用。決断良く豊島の4枚穴熊を端攻めで攻略した。両者は1勝1敗のタイで第3局を迎えた。

 ▼第3局 お互い金無双の相振り飛車で1日目午後から戦いが始まった。豊島が決断よく角切りから攻勢に出て角損してまで飛車を成り込んだ。駒得を生かして反撃に出た久保の攻めを豊島が受け損ね、97手で投了した。

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