2カ月連続“日本初撮影”映像公開のTBS「世界遺産」 ロケは想定外の連続

[ 2018年2月18日 12:45 ]

遊牧生活を送るイラン・メイマンドの人々(C)TBS
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 1996年4月から放送されているTBSの長寿ドキュメンタリー番組「世界遺産」(日曜後6・00)。同番組は世界遺産の魅力を、迫力のある現地映像とナレーションのみで伝える独特な手法で高い評価を得ている。これまでも数々の“日本初”映像を生み出してきたが、日本人として初めて撮影を行う難しさと、その壮絶なロケの裏側を堤慶太プロデューサーと石渡哲也ディレクターに聞いた。

 ◆ロケは想定外の連続…「予定は立てず」ぶっつけ勝負 夕日の撮影許可が夜に出た

 同番組は、レポーターのリアクションや感想を用いず、映像だけで世界遺産を見せる。世界各地をロケする番組は他にも多く存在するが、「力のある映像を届ける」というドキュメンタリー番組の根底を20年以上崩していない。堤Pは「レポーターがいるわけではなく、映像とナレーションだけで世界遺産を見せるので、番組の出来は映像が強いか強くないか、という一点になります」と番組作りの難しさを口にし、「僕はスタッフに『良い映像を撮ってきてね』と言うだけですから…」と実際にロケを行っている石渡Dに話を向けた。

 長年、同番組の現場を支える石渡Dは「撮影の予定は立てないです」と心構えを明かす。現場は想定外の連続だといい、「こういう映像を撮りたいな、と思うこともありますが、『これを絶対に撮る』とは思わないようにしています。人間が考えることには限界がありますので」と苦笑いを浮かべた。

 過去に訪れたサウジアラビアでは、ビルの上から夕日を撮影することを予定していたが、「許可が下りたのは夜」。「次の日はもう移動しなければいけなかったので、撮影の機材を持って、ビルの上の階でお茶だけ飲みました」と振り返り、「撮影の許可をもらいに行くと、係の人に『ちょっと待って』と言われて、待っていたら実際は(手続きに)半日かかってしまう…ということもあって。撮影が停滞することはよくあります」とぶっつけ勝負の部分が多分にあるという。

 ◆事前情報なし “日本初”映像を撮る苦労「怖さもある」

 特に取材が難しいのは日本のクルーとして初めて撮影する場合だ。18日放送「イラン メイマンドの文化的景観」、3月25日放送「コートジボワール タイ国立公園」は、ともに日本の撮影クルーとして初撮影に成功したが、イランの取材を担当した石渡Dは「事前に情報がないことが一番難しいです」と語る。

 観光客が多い欧州などの世界遺産では「マニュアル通りに、こうしてくださいって国が多い」が、初撮影となると、現地の協力体制が未知数のため、「普通は事前に情報を集めて撮影プランを立てますが、日本初撮影の場所だと行ってみないと分からない。現地の人々が撮影というものをどこまで理解しているのかも分からないし、本当に協力してもらえるのかな、という怖さも」あるという。実際にイランでは、ドローンを用いる撮影に軍隊、警察、州の許可が必要で、「毎日違うところから『許可は取っているのか』と電話がかかってきました」と何度も撮影がストップした。

 他にも「以前訪れたアフリカでは、航空会社が倒産してしまって飛行機が飛ばなくなって帰ることができなくなってしまったり…」と苦労は絶えないが、「イランのメイマンドは他の番組だと絶対に行かないと思います。普通に生きていたら行かないだろう場所を訪れることができるのは楽しい」とやりがいも感じている。18日放送分では、メイマンドで2000年以上変わらず“洞窟生活”を続ける人々の暮らしを紹介する。実際に“洞窟生活”を見た石渡Dは「イランは中東の危険な国というイメージがあると思いますが、素朴な良い雰囲気もある国だと感じてもらえるはず」と見どころを解説。堤Pは「彼らが2000年以上同じ暮らしをしていると考えたら、すごいと感じてもらえると思います」と視聴者に呼びかけた。

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