好評「アンナチュラル」野木亜紀子氏、逃げ恥ヒットの重圧なし 他ドラマ“援用”の狙いとは

[ 2018年2月10日 09:00 ]

金曜ドラマ「アンナチュラル」に主演する石原さとみ(C)TBS
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 石原さとみ主演のTBS金曜ドラマ「アンナチュラル」(金曜後10・00)内で、登場人物が他の人気法医学ドラマに続々と言及し話題となっている。第1話では米国の人気犯罪捜査ドラマシリーズ「BONES」、第2話では「臨場」「科捜研の女」(ともにテレビ朝日)が登場。第2話放送中には「科捜研の女」の主演を務める女優・沢口靖子(52)がSNSのトレンドワードとなった。劇中で同ジャンルの他ドラマを“援用”する狙いについて、「逃げるは恥だが役に立つ」(16年)を大ヒットさせ、「アンナチュラル」でますます注目を集める脚本家の野木亜紀子氏に聞いた。

 ◆ブームは「狙って起こせるものではない」 “逃げ恥”大ヒットの重圧なし

 16年に野木氏が脚本を務めた同局「逃げるは恥だが役に立つ」は初回平均視聴率10・2%からスタートし、最終話では、倍増以上の20・8%で有終の美を飾る大ヒット。さらに、エンディングで出演者が披露する「恋ダンス」は社会現象にもなった。

 今作では「逃げ恥」の脚本家として注目を集めるが、野木氏本人は「重圧は全然ない」とどこ吹く風。「逃げ恥」のヒットを「現象として視聴率が上がっていき騒ぎになっただけで、それは狙って起こせるものではないので」と分析。「粛々と面白いものを作っていくしかないです」と脚本家としての矜持を垣間見せた。

 ◆人の死を扱う難しさ 視聴者の視点を考慮「つらいばかりだと苦しい」

 今回は法医解剖医の主人公を描くオリジナル脚本。恋を描いた「逃げ恥」とは、テイストが打って変わる。さらに野木氏は法医学ミステリーの脚本は初挑戦。「今回は扱うのが死体で、物語は誰かが死んだところからしか始まらない。死体はよみがえったりしないし、どうしても重い話になってしまいがち」と独特な難しさを感じながらの台本作りが続いている。

 その中でも「連続ドラマで毎週見るとなると、つらいばかりだと苦しくなってしまう」と視聴者の視点を忘れない。「喜怒哀楽の色々な要素を含んだドラマのほうが楽しく見られるのではないのかなと思って」と台本作りの骨子を語り、「愛されるキャラクターだとか、面白いキャラクター、クスッと笑えるシチュエーションとか…」とドラマに取り入れている要素を明かした。

 三澄ミコト(石原)らUDIラボのメンバーに翻弄される久部六郎(窪田正孝)はまさに愛されキャラクターで、放送時には急上昇ワードとして毎回ネットを賑わせる。さらに軽快なセリフ回しや、劇中にふと登場するちょっとした“くだり”が視聴者をざわつかせている。

 ◆人気ドラマ“援用”がネットで話題 明快性を重視「イメージを端的に表現できる」

 クスッと笑えるセリフの代表例は、2話で東海林夕子(市川実日子)が口にした「沢口靖子は忙しいの」だ。遺体から採取された胃の内容物の分析をUDIラボが行うことになり、六郎が思わず「科捜研で調べるんじゃないんだ」と口に。視聴者の多くが沢口主演の人気ドラマ「科捜研の女」を連想したところで、ミコトが「科捜研は常に順番待ち」と説明し、さらに東海林が「沢口靖子は忙しいの」と補足した。

 この場面について問うと野木氏は「ネタをぶっこみたいから入れたわけではなく…」と苦笑い。「胃の内容物を調べるっていうと、皆は『科捜研で調べるんじゃないの?』と感じると思う。でも実際のところ、科捜研は順番待ちだし、そこで全部が全部処理されているわけじゃない。そのイメージを端的に表現するためには『沢口靖子は忙しい』が最適だと思いました」。実は2話は「科捜研の女」だけでなく、「臨場」の内野聖陽(49)もセリフに登場。1話でも日本の火葬と米国の土葬の違いを説明するために、「BONES」について触れた。

 2話放送時にネットが沸騰し、「沢口靖子」がトレンドワードとなったことについては「そこを狙ってはいなかったので、まさかトレンドにあがるとは…」と本人も驚きの様子。野木氏は先の3作品を挙げ「皆が知っているドラマ」とし、「説明部分の分かりやすさをちょっと面白くさせるために少しだけ使わせていただいた感じです」と“援用”の狙いを説明。「この『アンナチュラル』の世界のルールをちゃんと表明しておかないと…」と設定が視聴者に定着している人気ドラマとの混同を避けた形だ。ネットをざわつかせたセリフは、「視聴者の分かりやすさ」を追求した野木脚本の最たるものだった。

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2018年2月10日のニュース