大林監督 がん抑え込んだ厭戦への思い、意気軒高「あと30年」

[ 2018年1月18日 05:30 ]

2017年毎日映画コンクール日本映画大賞

日本映画大賞を「花筐/HANAGATAMI」で受賞した大林宣彦監督は妻・恭子さんと笑顔を見せる
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 太平洋戦争開戦前夜を生きた若者たちの青春を圧倒的な映像力で描いた大林宣彦監督(80)の「花筐/HANAGATAMI」が日本映画大賞に輝いた。

 肺がんで余命宣告を受け、治療しながらの撮影。熱い思いはがんをも退散させた。大林監督は「苦労をかけたスタッフが喜んでくれる。それがうれしい」と目を細めた。88年「異人たちとの夏」の監督賞以来の受賞だ。

 原作は檀一雄の小説。映画化の承諾を得て40年以上も前に脚本にした。「唐津に行ってごらんなさい」とロケ先の提案も受けた。東宝に持ち込んだが「スピルバーグのような作品を」と求められて軌道修正。それがホラー「HOUSE ハウス」(77年)で、戦地から帰ってこない恋人を待って婚期を逃した老女が家と化し、戦争を知らない少女たちを食べる話。作品に込めたテーマは一緒だ。

 「映画には旬がある」と話し、「花筐」の仕切り直しに動きだした。今の日本に戦争前と同じにおいを感じるからだ。設定を開戦前夜に変え、監督独特の映像魔術を駆使して人間ドラマを紡いだ。

 「がんごときでは死ねない。がんを患って15キロ痩せたら、糖尿病が治った。あと30年は映画を作り続ける」と意気軒高。妻の恭子プロデューサーも「(賞は)何よりの薬」と笑顔を見せた。「反戦ではなく厭戦(えんせん)。戦争を体験している人間が生きている以上は言い続けようと思う。いつか原爆の映画を撮りたい」と語った。

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2018年1月18日のニュース