菅田将暉 拳でつかんだ初タイトル、ボクサー演じ男優主演賞

[ 2018年1月18日 05:30 ]

2017年毎日映画コンクール男優主演賞

毎日映画コンクールの男優主演賞に輝き「あゝ、荒野」の舞台になった新宿の夜景を背にポーズを決める菅田将暉
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 2017年毎日映画コンクール(第72回)の各賞が17日、決定した。太平洋戦争開戦前夜を生きた若者たちの青春を圧倒的な映像力で描いた大林宣彦監督(80)の「花筐/HANAGATAMI」が日本映画大賞に輝いた。男優主演賞は「あゝ、荒野」の菅田将暉(24)、女優主演賞は「散歩する侵略者」の長澤まさみ(30)がともに初受賞。田中絹代賞には水野久美(81)が選ばれた。

 入魂のパフォーマンスに気持ちよくノックアウトされた。「あゝ、荒野」の演技で菅田が初タイトル獲得だ。

 「岸(善幸)監督と“お互いの代表作にしよう”と話していたのでありがたいです」の言葉に実感がこもる。

 前・後編で5時間を超える大作。「この時代に5時間の映画を受け入れてもらえたこともそうだし、映画は僕にとってのホーム。居場所にしたいところで評価していただいたことが本当にうれしい」と喜びをかみしめる。

 寺山修司が1966年に発表した小説を2021年に設定を変えて映画化。少年院送致の過去もある新次(菅田)と吃音(きつおん)と対人恐怖症に悩む建二(ヤン・イクチュン)がボクシングと出合い、友情を育みながらやがて拳を合わせるまでを描いた。

 半年かけて肉体改造に取り組んだ。ボクサーらしい体をつくるために減量ならぬ10キロの増量。「ただマッチョになればいいというものではないので、パンチを受けた時の腹筋や、打った時の肩の筋肉をつくるため、ひたすらサンドバッグを殴る日々でした」と振り返る。

 「親にも捨てられ、友人にも裏切られ、金もない。人への怒りでしか自分の命を感じることができない男が、最初は怒りで殴っていたパンチを違うところに使っていくという流れには共感できた」

 作品はテロ、高齢化社会、自殺サークルなど、近未来が抱える問題も盛り込み、そんな“荒野”で生きる人々を切なくもリアルに映し出す。激しい濡れ場に臨んだ恋人役の木下あかり(25)ら共演者にも感謝し、そして何と言ってもヤン・イクチュン。08年の「息もできない」などで知られる優れた監督でもあるが、「ボソッと“また監督やりたくなったな”と言ってくれたのがうれしかった」と話す。監督と役者として、2人の第2Rをぜひ見てみたい。

 16歳で大阪から上京。青山真治監督(53)の「共喰(ぐ)い」が転機となったと語る。昨年は「火花」「帝一の國」などでも存在感を示した。2017年は紛れもなく菅田将暉の年だった。

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2018年1月18日のニュース