「風雲児たち」で「真田丸」勢の新魅力!演出・吉川氏 イメージ固定「もったいない」

[ 2018年1月1日 11:00 ]

NHKエンタープライズ・吉川邦夫氏インタビュー(上)

正月時代劇「風雲児たち〜蘭学革命篇〜」で前野良沢を演じる片岡愛之助(右)と杉田玄白を演じる新納慎也(C)NHK
Photo By 提供写真

 昨年のNHK大河ドラマ「真田丸」の脚本を担当し、ブームを巻き起こした劇作家・三谷幸喜氏(56)の新作脚本ドラマとして、さらに「真田丸」のキャスト23人(発表分)が再集結して注目される同局の正月時代劇「風雲児たち〜蘭学革命篇(らんがくれぼりゅうしへん)〜」は1日午後7時20分から総合テレビで放送される。2004年の大河ドラマ「新選組!」から三谷氏とタッグを組み、今回は演出を手掛けるNHKエンタープライズのエグゼクティブ・ディレクター、吉川邦夫氏を直撃した。

 「真田丸」の後、三谷氏の新作ドラマ脚本は今回が初。原作は今年、画業50年を迎えた漫画家・みなもと太郎氏(70)の同名大河歴史ギャグ漫画。今回は片岡愛之助(45)と新納慎也(42)を迎え、前野良沢と杉田玄白による“蘭学事始”のエピソードを描く。

 西洋医学書「ターヘル・アナトミア」の日本初の和訳に一心同体で取り組んだ良沢(愛之助)と玄白(新納)の2人。鎖国ど真ん中の江戸中期に革命的な翻訳を成し遂げた。しかし、刊行された「解体新書」に良沢の名前はなく、名声は玄白だけのものとなった。2人の間に一体、何が起きたのか…。笑いとサスペンスに満ちた新しい三谷流歴史ドラマが生まれる。

 吉川氏は、三谷氏が初の大河脚本を担当した「新選組!」からの付き合い。当初は2番手のディレクターを務める予定だったが、三谷氏との脚本作りを先行。結局、最終回の1つ前、第48話「流山」しか演出に割く時間がなかった。「真田丸」もプロデューサー5人体制のうちの1人として三谷氏と脚本作りに携わり、第4話「挑戦」を演出した。

 今回の演出プランを尋ねると「良沢たちの“知の冒険”をいかに楽しく分かりやすく可視化するか。“感覚の可視化”を目指しました」と説明。例えば、翻訳作業のシーン。良沢、玄白、中川淳庵(村上新悟)が「ターヘル・アナトミア」の同じページを見ていても、3人のオランダ語の理解レベルは違い、3者3様の見え方だったはず。その“感覚”をCGを用いて“可視化”する。

 ほかにも「前野良沢は何色の人、杉田玄白は何色の人」とイメージカラーを付けたり、コマ落としやスローモーションなどを使って“時間をコントロール”したり、時代劇としてはかなり多様な表現に挑戦。それも、今作が90分一本勝負のドラマゆえ。「前野良沢ら今回の登場人物たちの多くは、日本史を代表する有名人ではありません。視聴者の皆さんが織田信長や豊臣秀吉や徳川家康に感情移入するのとは訳が違いますから、登場人物の特徴をギュッと凝縮し、振れ幅を大きくしてストーリーを構築しないと、何も始まらないうちにドラマが終わりかねません。1年間かけて人物像がクッキリしてくる大河ドラマとは異なり、90分で走り切る手法を探りました」

 もう1つの演出方針は「真田丸」キャストの新しい面を引き出すこと。「真田丸」で秀吉の家臣・大谷刑部を演じた愛之助だが「演出としては、愛之助さんの別のチャンネルが開くようにしたいと思いました。大谷刑部も生真面目でしたが、あくまで常識人。前野良沢は真面目すぎるがゆえに常識を超え、変人に見えるところまで行きたい。それが愛之助さんの別の魅力につながってほしいな、と」

 新納は「真田丸」で秀吉の甥・秀次を演じた。秀吉は息子・秀頼を溺愛する一方で、秀頼が成長するまで守ってくれる数少ない身内だった秀次にも目をかけ、気遣ったが、秀次はその意図を読み違え、プレッシャーを感じて自害。その姿を繊細に表現した新納だが「もともと明るくポジティブ。ミュージカルの世界で、パフォーマーとして表現が大きい人。秀次でもその特徴がなかったわけじゃないですが、新納さんが本来持つ魅力の方に寄せてみたいと思いました」とキャラクター造形をした。

 「実際、『真田丸』で認知度を上げた役者さんたちもいる中で、『真田丸』の役柄イメージだけが固定されるのはもったいない。今回は『真田丸』ファンの皆さんにはきっと見ていただけるので、『真田丸』キャストの新しい魅力に気付いていただくことが一番、意味のあることだし、楽しいことだと思いました。ここまで『真田丸』出演者が揃ってしまうと、特に演出としては別の面を意識的に引き出さないといけないと心掛けました」。その仕上がりが待ち遠しい。

続きを表示

この記事のフォト

2018年1月1日のニュース